第9章 魔除けのペンダント

Ver.2/第67話

 タロットカードを1組そろえ終わり、なんだかんだと遅い時間になっていたので、解散となった後、ハルマは自宅でタロットカードを取り出していた。

「えーと? これを使えばいいのか?」

 1枚1枚に数字とイラスト、名称がある。

 魔術師、女教皇、女帝、皇帝、法皇、恋人、戦車、力、隠者、運命の輪、正義、吊るされた男、死神、節制、悪魔、塔、星、月、太陽、審判、世界、愚者。

 一般的なタロットカードと同じであろう。

 取り出したタロットカードが1組分そろうと、アナウンスで使用するか否かの選択ボタンが表示された。

「まあ、使うよな」

 YESのボタンにタッチすると、タロットカードがパラパラと宙に舞い上がり、誰かにシャッフルされるようにぐるぐるとランダムに混ぜられた。

 当然、ハルマに絵柄は見えていない。


『カードを選んでください』


 再びアナウンスが表示された。

「これで、テイムモンスターの種類が変わるのかな?」

 宙に浮かんでいるのだから、回り込めば絵柄がわかるんじゃないかと移動してみたが、ハルマの動きに合わせてタロットカードも動くので、そりゃそうか、となった後、しばし考え込んでいるとマリーに話しかけられた。

「何してるの?」

「んー? この中から1枚選ばないといけないから、どれにするか考えてるんだよ。マリーも選ぶか?」

 冗談半分で提案する。

「えへへ。いいよー」

 マリーの愛くるしい笑顔に、ハルマも肩の力が抜けていた。

「ま、何でもいいか」

 どんな〈聖獣の卵〉であっても、楽しくやっていけるだろうと回りで眺めている仲間達を見て気が軽くなっていた。

 それに、この卵からテイムモンスターが生まれてくることが判明しているわけでもないのだ。

 ハルマは、ポンと指先で1枚のタロットカードをタッチした。


 ……のと同時だった。


「マリーはこっち!」

 小さな手が、ビシッと別の1枚をタッチしてしまう。

「え!?」

 全く同じタイミングでタッチされた2枚のカードが光り出し、残りのカードは粒子となって2枚を包み込むように集まり出した。

「え? え? え?」

 確かに、自分から言い出したことだが、本当に選べるとは思っていなかったのだ。明らかにイレギュラーなことが起こっていると思いながらも、目の前の光景を見つめることしかできなかった。

 何より、ちゃんと2枚が選択されたということは、仕様として存在しているということだ。

「どうなるんだ?」

 オロオロしながら結果を待っていると、宙に浮かんでいた2枚のタロットカードは粒子に完全に包み込まれ、球状になっていた。

 

『〈隠者〉と〈世界〉のカードが選択され〈聖獣の卵〉を手に入れました』


 ハルマの手の中に、ラグビーボールほどの大きさがある卵が収められていた。

「そうきたかあ……」

 さすがにイベント報酬であるので、妙なことにはならないと思っていただけに、自分の表情が引きつっているのがわかった。

「ハルマ! タマゴだよ! おっきいねー。何が生まれるんだろう?」

 卵の回りを、背中に取り付けた羽をパタパタ動かしながら飛んで楽しそうに眺めているマリーに視線を向けると「だいたい、おかしなことになる原因って、マリーのせいだよな?」と、脱力するのだった。

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