Ver.2/第66話

「今のうちに城門突破するよ!」

 ハルマがぶち抜いた隙を突いてスズコが声を上げる。ただ、これに動かされたのはモカだけで、他の面々はハルマ以外、すでに行動に移っていた。これにはハルマの仲間達も含まれる。

「うわ。さすが慣れてるね」

 感心するモカだったが、それも一瞬のことだった。

 一度スイッチが入れば、彼女ほど頼りになる戦士もいない。

 デュラハン化することはなかったが、それでも機動力は段違いだったのだ。

 ドンドン加速していき、そのままの勢いで城門に長槍の一撃を叩き込む。

「うひゃー」

 ドカン! と、爆発でも起こったのか思うほどの衝撃音が発せられると、すでに城門の耐久値は3割ほども落ちていた。

「続け!」

 チップも負けじと大剣の大技を叩き込み、かなりのダメージを与えている。続いて届いたアヤネとミコトの魔法と、ヤタジャオース、ズキン、ニノエの連続攻撃によって、呆気なく城門は陥落していた。

「こんなに早く城門落とせるのね……」

 指揮に気を取られていたせいで、一足遅れたスズコは呆れている。

「そうっすね。なんなら、銅の時より早いっすね」

 ゴリも出番を失い、遅れて駆けつけたスズコに告げていた。


 その後の展開も、鮮やかなものだった。

「ズキン、ニノエ、中を探索して結界装置を探して来てくれ! 戦闘はなるべく避けるんだぞ!」

「かしこまりました。旦那様」

「りょうかいっす!」

 ハルマの指示に従って走り出したふたりのNPCによって、程なく目的地が発見され、制限時間を半分も残してダンジョンクリアとなってしまったのだ。


「くそー。またかぶったあ」

 チップの嘆きに続き、数人が表情を曇らせた。

 ハルマも3枚中2枚が同種のカードだったが、どちらも未所持のものだったので、良し! という顔である。

「まあ、ハルちゃんのおかげで攻城戦でも手こずることはなさそうだから、次行きましょう、次」

 モカの言葉に促され、この後も同じく未攻略のプラチナ門に向かうことにした。ハルマの〈覆面〉と〈離れ技〉のコンボのおかげで、テンポ良く攻略は進んだものの、それでも12か所目にして、ようやく全員タロットカードのコンプリートに成功したのだった。


「いやー。今回もハル君に助けられちゃったね」

 目的の1枚が最後まで出ずに、何かの呪いにでもかかってるのではないかと途中から気落ちしていたスズコも、ホッとした表情になっている。

「ホント。ハルちゃん単体でも助かるのに、レイドパーティ並みの人数で挑戦できるんだから楽よねえ」

「でも、これでテイムモンスターが広まったら、こういう感じの戦いが基準になっていくんでしょうね。詰まってるエリアボスも、テイムモンスターがいるのが前提の強さって言われたら、納得ですもん」

 モカがニッシッシと笑みを浮かべながら告げると、チップが重ねていた。

「ってなると、しばらくはテイムモンスターの育成に時間費やさないと、か……。先に進めるのは、まだまだ先だなー」

 ゴリの言葉に、多くの者が深いタメ息を吐き出していた。しかし、それと同時に、新しいことが始まるワクワク感も吸い込んでいるようでもあった。

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