Ver.2/第64話
「あったよー」
少し離れた所から、スズコが呼ぶ声が聞こえてきた。
山岳エリアの窪地に隠れるように置かれたプラチナ門には錠前が付けられたままで、周囲に他のプレイヤーの姿もない。
プレイヤーの中には、攻城型のダンジョン攻略に時間を使うよりも、虹の門を探す方が効率的だと考えているものも少なくないほどなので、放置されていることが多いのだ。
「ハルマは攻城戦、初めてなんだよな?」
準備を整えている間に、チップが訊いてきた。
「そうだよ」
「じゃあ、簡単にルール説明しとくな」
「お? ありがたい」
「ざっくり説明すると、夏のイベントの防衛戦の逆って感じだ。ただ、ここの場合は城門を破壊しただけじゃダメだから、中の結界装置を破壊しないとクリアにならないんだ。しかも、あの時と違って、城の中も入り組んでるから、結界装置を探すのもちょっと苦労すると思う」
「その分、他のダンジョンよりも制限時間は長めに設定されてるけど、経験上ギリギリ足らないことが多いわね」
チップの説明に、合流したスズコも付け足すと、ゴリも話しに加わってきた。
「最大のネックは、やっぱり城門の突破かな?」
「そうね。物理ダメージで破壊もできるんだけど、門の上からひっきりなしに攻撃されるから、近寄れないのよね」
「あー。それで魔法職じゃないと壊せないってことなのか」
「そういうこと。大楯なら大したダメージ受けずに近寄れるんだけど、自分、守るの専門で、火力は当てにならんのよ」
「モカさんはどうやってるんですか?」
ふと、同じソロプレイヤーであるモカの戦い方が気になった。
「んー? うちもさすがにひとりだと無理。やられる前にやっちゃえ! と、思って突っ込んでみるんだけど、それで成功したのも銅だけだね」
「銅なら、いけたんすね……」
お手上げですよ、というポーズのモカだったが、チップ達の視線はどこか遠くにいってしまっていた。
「と、とにかく。やることは、まず城門の破壊。次に城内に侵入して探索。最後に、結界装置の破壊、ね」
我に返ったようにスズコがポンと手を叩くと、一行はプラチナ門の中に入っていくことになった。
門をくぐり、イベント空間に転移すると、けっこうな広さがある荒野に立っていた。目の前には〈ゴブリン軍の進撃〉の時に使った砦と同じサイズのダンジョンが建てられている。
「城門は1か所?」
視界の中にアナウンスが表示され、ルールが説明される。
「いや。一応3か所あるけど、難易度はどこも一緒じゃないかな? 中に入った後にちょっとは違いがあるだろうけど、制限時間考えると移動に時間使うよりも、正面から攻めることに集中して大丈夫だ」
「オッケー。じゃあ、まずは城門を壊すことに集中だな。遠距離攻撃ってなると、ニノエくらいか。ズキンもヤタジャオースも属性攻撃があるとはいえ、射程はそんなに遠くないもんな……。ん?」
始まる直前、何かを思いついたことに気づいた者はいなかった。
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