第7章 切り株の村Ⅱ

Ver.2/第50話

「ここも転移場所に設定できるのか」

 足湯で一通り癒された後、長老樹の前に戻ると祭壇の修復を済ませる。

 前回来た時、修復に必要な物は調べておいたので、後はイベント〈ゴブリン軍の進撃〉で取得していた〈修復〉スキルの出番である。

 祭壇が元に戻ると、転移場所として登録できるアナウンスが表示されたのだ。

「これで、いつでも足湯を使いに来られるってことね。こうやって転移場所増やせるってことは、他のエリアにも、こういう場所あるのかもな」

 足湯の効果は地味に便利なものだった。

 一定時間浸からなければならないが、HPとMPは全快し、バッドステータスも回復する上に、各種バッドステータスへの耐性が20%、3時間付与される。また、自動回復5倍の効能が同時に付与される。

 見知らぬ土地を冒険する前には寄っておきたい効果に思えた。

 しかし、目的だったハイブリッドポーションの素材は手に入らなかったため、何ともいえない気持ちでスタンプの村に帰ることになるのだった。


「ん? 何だ?」

 村に転移すると、切り株に住人が集まっているのが見えた。

 何事かと首を傾げていると、ハルマに気づいたモカが寄ってきた。

「ハルちゃん、いいところに。あれ、どうしたの? 何か、新芽が出たとか騒いでたけど」

「新芽? え!? 切り株に芽が出たってことですか!?」

「そうみたいだよ? ハルちゃんも知らないのか……」

 モカの話を聞いて、急いで切り株に駆け寄ると、確かに大きな切り株の中央に新芽が生えていた。

 ただ、新芽というにはかなり大きく、すでにハルマの身長を越えた高さにまで成長している。

「どうなってんだ?」

 心当たりがあるにはあるが、どうしてここにつながるのかがわからない。

 すると、説明してくれたのはトワネだった。

「あの長老樹は、やはり世界樹と根がつながっていたのですね。この木が長年成長できなかったのも、魔物に邪魔されていたからだったみたいです」

「この木、ただのご神木じゃなくて世界樹だったの? ってか、根がつながってる?」

「はい。世界樹は大陸全体に根が伸び、分身とも呼べる木を育てているのです。そうやって大陸全体を見守り森を育んでいたのですが、親であるこの木が倒されたせいで分身達も力が弱まり、魔物に占拠されてしまっていたのでしょう。あの長老樹が復活したことで、この木にもようやく力が戻ってきたようです」

「ってことは、あの長老樹以外にも分身が生えているってことか?」

「そうですね。おそらく他の木も魔物に悪さされているのでしょう」

「はー。なーるほどねー」

 まさか、自分の村に世界樹が生えることになるとは思っておらず、まだ見ぬ巨木を見上げてしまう。

 そうしていると、アナウンスが表示された。


『風の大陸の森の神、トワネの封印が一部解除されました』

『トワネがスキル〈擬態〉を取得しました』

『トワネがスキル〈木霊〉を取得しました』


「切り株の復活がトリガーだとは思ってたけど、トワネの完全復活までは、まだまだかかりそうだな」

 世界樹の新芽を眺めながら、この世界の奥深さを改めて実感するのだった。

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