Ver.2/第42話

 ニノエの案内に従って森の中を進むと、以前から気になっていた場所に向かっていることに気づいた。

「やっぱり、何かあったんだな」

 自然豊かなエリアの中にあって、ここだけ石垣の塀が作られているのだから、不自然に思うのが自然である。

「前に来た時は、ぐるっと1周、石垣が続いていて、入口らしき場所がなかったんだけど、どこから入るの?」

 トワネであれば乗り越えられる形状の塀なのだが、正規のルートがあるのなら、それを使うに越したことはない。それに、こういう場所は、正規でないルートから侵入すると良くないことが起こるものだ。

「この塀はただの目印っす。この境界線を抜けようとすると長老樹の結界が反応して、雷を落とされるっす。でも、それも、あそこにあるしめ縄の高さまでっすから、上からだったら、ふつーに入れるっす。風喰いクラスの大きさだと、上からでも入れないっす。あと、この森には鳥系のモンスターはいないっすから、それで事足りてたっす」

 ニノエの指さす方を見上げてみると、近くの巨木にしめ縄が結ばれていることがわかった。おおよそ地上から15メートルくらいの高さであろう。

「いや。簡単に言うなあ。どうやってあの高さまで登って、向こう側に降りるんだよ?」

「エルフは森の民っすからね。木登りは得意なんすよ。ほら、あそこに、やぐらがあるっすよね? あそこまで登ったら、ロープと滑車があるので、滑り降りられるっす。風喰いもいなくなったことっすから、安全なはずっす」

 再びニノエは頭上の一か所を指さした。見てみると、枝葉に隠れて見え難いが、確かに小さなやぐらが作られ、結界の中にロープが伸びているのがわかった。

「風喰いとこの場所って、セットだったのか……。しかし、トワネに頼んで登れるとして、滑車使うのにSTRが必要だったりしないよな?」

 ニノエが自力でさくさく木を登るのを横目に、トワネに頼んでやぐらまで登ると、言われるまま滑車をつかむ。後は、これにぶら下がって宙を滑り降りるだけなのだが、なかなか踏ん切りがつかない。

 やはり、自分のSTRが低いことが気になってしまうのだ。

「落下ダメージ、あったよな?」

 多少の高さまでなら判定が入らないのだが、この高さになるとさすがにノーダメージということはないだろう。そして、ハルマのステータスでは、即死級のダメージであることも容易に想像できる。

「いかぬのか?」

 こういう時、真っ先に急かしてくるのは、いつもヤタジャオースである。

「お前は飛べるからいいけど、こっちは落ちたら死んじゃうんだぞ? まったく……」

 軽く愚痴るも、行かないことには話も進まないことは承知している。どうにかして向こう側に降り立たなければならないのだ。

 と、そこで、ひとつのスキルを思い出していた。

「あ……。こういう時こそ、使えるんじゃね?」

 ハルマはインベントリから、ひとつのアイテムを取り出していた。

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