Ver.2/第38話

「いやー。ダークエルフって言われてますけど、私達もふつーのエルフと変わらないっすよ? 呼び名が違うだけの、同じ種族っす」

 ニノエを連れて自宅に戻ってみると、彼女のキャラは一変した。

 ダークエルフの集落にいる間は、長の娘ということで、キリッとした才女のイメージを作っていたらしい。ハルマに仕えると名乗り出たのも、堅苦しい集落から出たかったというのが一番の理由らしいが、父親の命を救ったことに対しては、本心から感謝していた。

「え? そうなの?」

「もともとエルフ族は世界中にいたらしいっすけど、だんだん風の大陸の集落が大きくなって国になったっす。でも、その国に参加しなかったエルフも当然いて、そういう人達は、ほとんどが闇の大陸に集落を作ってたっす。なので、風の大陸のエルフと、闇の大陸のエルフを区別するために、エルフ以外の人たちが闇の大陸に住んでいるエルフのことを、ダークエルフって呼び出したらしいっす」

「へぇー。ん? でも、風の大陸に住んでるんだよな?」

「ああ、はい。私たちの部族は、何百年か前に闇の大陸から移住してきたっす。理由は、私もよくわからないっす」

「この大陸に何百年も暮らしてるのに、ダークエルフのままなのか……」

「そうっすね。それだけ経っても、この大陸のエルフとは習慣が違うので、なかなか馴染めないみたいっす。何せ、エルフ族は長命なので、数百年経っても一昔前って感覚の人が多いんすよ。だから、古臭い考えの人も多くて、肩が凝るんすよねえ」

「ははは……。苦労してきたんだな」

「そおっすよー。でも、ハルマ様のおかげで脱出に成功できたっす。感謝しかないっす」

「そりゃ、どうも」


 ニノエは、レベル55のダークエルフだった。

 それも、そのはずだ。彼女たちが暮らすアウィスリッド地方にはフォリートレントを倒さなければ入れない。チップ達のようにレベル40を超えているプレイヤーが束になってかかっても、未だ到達できていない場所なのだ。

 つまり、本来はレベル50以上になってから入れることを想定しているのだろう。

 集落の長が話していた通り、弓と短剣のスキルを持ち、風と光属性の魔法を使えた。ステータスはバランス良く成長しており、AGIとINTが少しだけ高い。

 これだけでもじゅうぶん戦力として申し分ないのだが、ハルマにとって最大の長所は、見た目がプレイヤーと大差ない点である。

 耳はエルフ耳と呼ばれる、横長で先端が尖った形をしているが、何の問題もなかった。

 なぜなら、この形状の耳は課金アイテムとして販売されているからだ。

 何も知らない者が見たら、ちょっと背の低いプレイヤーだな、くらいにしか思われないだろう。

 そして、彼女からの情報で、ハルマにはひとつ、やることが見つかっていた。

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