第5章 ダークエルフの集落
Ver.2/第32話
「本当に誰もいなさそうだなー」
このところのハルマは、アウィスリッド地方での散策に明け暮れていた。
自分しか体験できないエリアであることも理由のひとつだったが、単純に、こそこそと動き回る必要がないという解放感が気持ち良かったのである。
加えて、このエリアは全体が森林で形成されているため、今までと同じような感覚もあり安心感もあったのだ。
これが他のプレイヤーで溢れるようになると、PVPの心配もしなければならないため、存分に堪能できるのも今だけに思えていた。
エリアボスのフォリートレントは現状、最難関ボスのひとつであるが、このエリアに徘徊するモンスターは先日チップ達とジャック・オー・ランタンを集めるのに向かったカサロストイ地方と同程度の強さであり、ヤタジャオースとズキンがいれば手に負えないということもなさそうだった。
もちろん、ハルマが戦闘を目的にここにいるはずもなく、やっていることは素材の採取がメインである。
カサロストイと同レベルのエリアと思われるが、こちらの方が若干ランク的に上なのか、あちらよりもCランクの採取ポイントを多めに見つけることもできていた。
ただ、他のプレイヤーの目を気にする必要がないおかげで、トワネに乗って移動できていたので、普段よりもかなりスムーズであった。そのため、一日の採取上限数にすぐ到達してしまう。
「あ! 上限いっちゃったかあ。Dランク以上に絞っても、すぐだなー」
ここであれば、ハイブリッドポーションの素材も見つかるかと思い探しているが、今のところ手がかりはない。
素材採取の上限に達してしまうと、後はジャック・オー・ランタンを探しながら、目的もなく観光して回るだけとなる。
それでも、今まではズキンやユララ、ヤタジャオースが見つからないように周囲を警戒しながら移動してたことを考えると、トワネに乗って堂々と動き回れるだけで楽しかった。
森林のエリアをぐるりと囲むように高い崖がそびえており、幅の広い滝が流れ落ちる場所を見つけ、しばしその迫力に圧倒される。
続いて、その滝から落ちた水が流れる川に沿って移動を始めると、巨木に隠れて見えていなかったが、大きな湖を見つけることもできていた。
湖を覗き込むと、ユララと出会った時に見かけた空魚と同じくらいの大きさがありそうな影も確認できた。
「あれは……。釣り上げられるのか? それともモンスターか?」
水の透明度は高いが、水深が数十メートル、もしくはそれ以上あるらしく、大きな影がゆっくりと移動しているようにしか見えない。
「さすがにあの影だけでは、判別できませんねえ」
トワネも水底を覗き込んでもわからないようであるが、言葉を続けた。
「でも、確か、この湖には水神様の眷属も立ち寄ることがあったと思いますよ? なので、モンスターは住み着いていなかったかと……。もしかしたら、眷属様かもしれませんねえ」
「水神様? 水の大陸の神様か? ヤタジャオースが負けたっていう」
「いや。グーオーンのやつとは別の神じゃよ。グーオーンは水の神と呼ばれるが、水の大陸の守護神と呼ぶ方が正しい。それに対して、水神は世界中の水にまつわる神なんじゃ。どちらが格上なのかは、我も知らぬがな」
「はー。この世界を作ったのが
こうしてまたひとつ、この世界の知識を得るのだった。
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