Ver.2/第22話

 魔女の行動パターンも把握し始め、急場の連携も上手くいくようになると火力は豊富なメンバーである。一気に魔女のHPバーは削られていき、3回目のカボチャ設置が終わった頃には半分にまで減っていた。

 ただし、魔女の魔法防御力が高く、アヤネの魔法攻撃はあまり効果がないことがわかり、途中からカボチャの処理に回っていた。代わりにズキンがモカとスズコに加わる編成に切り替わっている。

「さて……。パターンが変わるか?」

 ゴリの後ろで、全体の指揮をとっていたスズコが呟いた。

 多くのゲーム同様、ボスはHPの減少具合により、戦闘パターンを変えることが多いのだ。そして、そのタイミングは50%、25%のことが多い。

「ビンゴっす! パターン変わります!」

 大楯を構えながらゴリが叫んだ。

 これまでは、カボチャを破壊されるとしばらく間を置いてから、再びカボチャを設置するために飛び回っていたのだが、HPが半分を切り、周囲のカボチャが全て破壊されたところで杖を取り出したのだ。

「魔法が強力になる?」

 ミコトが予測を口にするが、半分正解、半分外れであった。

 それまで火属性の魔法主体だったところに、複合属性の魔法に切り替わったのだ。複数の属性を持つ魔法は、往々にして強力なことが多い。

「何? この魔法」

 魔女が杖を振り上げると、頭上に雨雲のようなものが広がり、ボトリと黒い塊が落下してきた。その数は3つあり、他にも落下位置がランダムと思われる雷も降り注ぐ。

「わかんないけど、あまり良い予感はしないわね」

 スズコは油断なく周囲を見回す。

「コウモリ?」

 ボトリと落ちた影は、宙に浮かびコウモリの形となって飛びかかってきた。

「ちょっ!? これ、受け止めちゃって大丈夫っすか!?」

「わかんないけど、犠牲になれ!」

「そんなあぁ」

 ゴリは非難めいた声を発したが、しっかりと大楯で受け止める。

 直後。

「い!?」

 コウモリの影はゴリにべちゃりと張り付いてしまった。

 それを逃さず、魔女の火球が飛んでくる。

「先輩! とても嫌な予感がします!」

「気が合うわね。あたしもよ!」

 魔法を受けてはいけないと皆が思ったが、しかし、ゴリは律儀に大楯使いの使命を果たして見せた。

「いぎゃー!」

「わお」

 モカが思わず声を上げたのも仕方ない。これまで魔法を受けても半分も削られなかったゴリのHPが、一気に尽きてしまったからだ。

「あのコウモリ受けると、魔法防御力が大幅に減少するのね。ゴリの犠牲は無駄にはしないわ」

「いやいや。蘇生薬なら余裕がありますから」

 呆気なくスズコに見捨てられたゴリだったが、すぐさまハルマの作った天冥の霊水が使われる。ハルマが貢献できることといったら、消費アイテムをばんばん使うことくらいであると、途中からMPポーションを大盤振る舞いしていた。それもあってMPを気にせず大技を使えているという面もある。

「助かった、ハルマ君。それにしても、ひどいっすよ先輩」

「にゃははは。良いじゃないの。あたしだって使う気はあったわよ?」

「本当っすか?」

「ホント、ホント。それより、次のコウモリ、来るよ!」

 気心の知れた相手だからこその軽口も、とどまることを知らない攻撃に中断させられる。

「うぇ!? これ、物理攻撃効かないよ!?」

 今度はゴリに当たる前にモカが槍を突き立てたのだが、攻撃判定されることなくモカに張り付いてしまった。

「モカさん、後ろに!」

 魔女はコウモリを受けた相手を狙って即座に魔法を放っていた。

「ねーちゃん、どうする? コウモリ避けながらだと、近寄れないぞ?」

「そうかといって、ゴリを盾に使うわけにもいかないもんねぇ」

「とりあえず、ボクがコウモリ受けて、ゴリさんにかばってもらうよ」

 チップとスズコの方針が固まらない中、シュンがその場しのぎの案を出す。

 ところが、これでいけると思ったところで、コウモリには別の効果もあることが判明した。

「え!? ダメだ、チップ! これ、AGI低下の効果もある! 3つ受けると身動き取れなくなる!」

「マジかよ!?」

 そうして、あえなくシュンも魔女の火球に焼かれてHPをゼロにしてしまい、すぐさまハルマの蘇生薬で復活することになった。

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