Ver.2/第21話
闇の中にひとつずつ明かりが灯り始め、そこが閉鎖された空間であることがわかってくる。
「ねーちゃん、どう思う?」
「ん? まあ、あんたが思ってるのと、たぶん一緒」
「だよなー。一定数お菓子を交換すると、確定で存在しないお菓子を要求されてボス戦に突入、だろうな」
「でも、これって、たぶん、勝ったらコウモリの使い魔もらえるんじゃない?」
「可能性大、だな。来るぞ!」
状況を把握する時間を与えられたのか、戦闘の準備が整うのを待つ時間だったのか、少し待たされた後で上空から巨大な布が舞い降りる。
布はヒュルンと再び浮かび上がると、捻じれ、ポンッと煙を出したかと思ったら、箒に跨った魔女に姿を変えていた。
「イーッヒッヒッヒ!」
魔女は奇声を発しながら飛び回り、あちこちにカボチャを落とすと、とある地点で静止して魔法を放ってきた。
「あのカボチャ、設置タイプの爆弾か何かだろうから、近寄るなよ!」
チップが声を上げる。
こういう時は、敬語なんか気にしてられない。
飛んでくる火球の魔法は、ゴリが大楯で受け止める。
「アウチッ」
痛みは感じないのだが、炎のエフェクトがリアルなため思わず声が出てしまうのだ。ただ、痛みを感じることがなく、防御力に優れていてもHPは削られる。
しかし、それもすぐにミコトが回復していた。
「ゴリ! 相手が魔法攻撃主体となると、アンタが防衛の要だからね! 攻撃は何とかするから、耐えきって!」
「了解っす!」
「ミコトかアヤネちゃん。どっちか攻撃に専念して! ゴリは自分でも回復できるから、ある程度は放置しても大丈夫!」
「わかりました! じゃあ、回復はいつもゴリさんと組んでるミコトさんに任せますね」
「わかった。任せて」
戦い慣れた面々が、テキパキと役割を決めて動き始める中、ハルマはどうしたものかと悩んでいた。
相手が魔法主体の攻撃では、迂闊に近寄れない。
それは先日、死にかけたことで実証済みだ。
かといって、弓での攻撃に転じても、動きが遅いため回りに歩調を合わせるのが難しい。今も、何もできずにゴリの後ろから離れないように移動するだけで一杯一杯なのだ。
これは、ただAGIが低いだけでなく、パーティプレーに慣れていないということにも起因していた。
そうしている間にも、情報は追加される。
「待って! あのカボチャHPバーがあるよ! あっちから先に片付けないとマズイかも!」
シュンがいち早く気づき、声を出す。
「そっち系か! くそっ、あの魔法に連続で堪えられそうなのオレだけか……。シュン、位置取りに気を付けながら、タゲ(ターゲット)管理してくれ。ミコトさん、オレとシュンの回復も頼みます!」
言うが早いか、チップはゴリの後ろを離れ、カボチャ目がけて走り出す。シュンも指示通りに飛び出し、魔女の注意を逸らし始めた。
「ズキンもカボチャを片付けてくれ!」
チップだけに任せるには、少々数が多かった。
「うちは何したらいい?」
モカも魔法攻撃は苦手らしく、飛び出せずにいたようだ。
「モカちゃんは、あたしと一緒に待機してて。ゴリ。カボチャが片付いたら、一気に距離詰めるよ。そしたら、モカちゃんとあたしで本体叩くから!」
「りょーかい」
「了解っす」
こうやって、突如始まったボス戦は、ドタバタしながらも順調に進んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます