Ver.2/第14話
「できたあ……」
生産職として培ってきた勘は正しかった。
最初の1回で、すでに蘇生薬として使えるレベルのものが出来上がり、2回目には報酬としてもらっていたものと同じクオリティのものに仕上げることができていた。
最初は、手順の確立を優先したため、品質は考えずに作ったことが劣化版になった原因であり、想定内である。
予想通り、ポーションを百厄の薬と混ぜ、抽出したMPを加えることで完成させることができた。この際、MPに関しては抽出機を使ってもドレインを使っても、品質に差は出なかったが、ポーションは抽出機にかけなければ劣化版になるようである。
満足できる結果になったが、問題もあった。
まず、欲しかったアイテムはこれではない、という点だ。
蘇生薬が出回ることは多くのプレイヤーが望んでいることだと思われたので良いことだろう。しかし、本当に欲しかったのは、死ぬ前に使うハイブリッドのポーションであり、こちらは何の手がかりも得られていない。
次に、これをハルマがひとりで作り続けるのは、手に余るという点である。
レシピを独占するのは簡単だ。
しかし、ハルマの心情として、何となくフェアな気がしなかった。そうなると、答えはひとつしかなくなる。
翌日、興奮気味にチップからのチャットが飛んできた。
「おい、ハルマ。知ってるか? 蘇生薬のレシピが出回り始めたんだぜ? しかも、信じられないくらい格安で!」
「知ってるよ。特許持ってるの俺だもん」
「は!?」
「いやー。モカさんに頼まれて、全然別のアイテムのレシピ探してたんだけど、たまたま見つけちゃってさ。俺が独占するのも荷が重かったから、負担を減らそうと思って」
「おいおい。どうやったら蘇生薬のレシピがたまたま見つかるんだよ?」
「ん? 魔王スキルで覚えた〈贋作〉ってのを試してみたら、たまたま素材がそろってただけだよ?」
「おおぅ……」
事も無げに告げるハルマに、チップは絞り出すように言葉を吐き出すだけだった。
ハルマが選択したのは、これだった。
開発レシピとは毛色が違ったため、特許を申請できるのか怪しかったが、登録したらすんなり権利を獲得できたので、新規プレイヤーでも買えるほどの低価格で売り出したのである。
本来であれば、その100倍以上の値を付けても一定の需要が見込めただろうが、儲けるつもりはなかった。
蘇生薬のレシピが一般的なものになれば、ハルマ個人の負担も減る。
懸念は、蘇生薬が余りに手軽に使えるようになると、緊張感のある戦闘ができなくなってしまう可能性もあることだが、そう簡単に数が出回るとも思っていなかった。
必要素材である百厄の薬が、今のところ雨降りの迷宮でしか入手できないからである。ただ、これもその内、別の場所から見つかるだろう。
そうなれば、少しずつ安定して素材も手に入れることができるかもしれない。
ハルマとしては、ダンジョン攻略を飽きるほど繰り返すのは、あまり趣味ではないため、所持金に余裕のある現状、購入してそろえる方がメリットが大きいと思えていた。
「はぁ……。まあ、ハルマらしいっちゃ、ハルマらしいな」
チップも親友の行動には理解できる部分もあったため、非難することはないのだった。
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