第83話
数は少ないが、レア度が高いからと取っておいた素材の中に、良さそうなものが見つかった。
どちらもカラス天狗からの贈り物である。
ズキンは裁縫系の素材しか持ってきてくれないが、その中に水系素材があったのだ。ユララに水の大陸を任された方のカラス天狗達は、まだ日も浅いため、正確にはわからないが、ズキンの持ってくるものよりはレア度が低いものの、種類を問わず届けてくれるようである。その中に材料にするには数が不足している枝系の素材があった。
装備類の材料にするには数が少ないが、紙を錬金するにはじゅうぶんな量が確保できたことで、最大サイズの紙を錬金することに成功した。
「でかいなー。このサイズの紙、〈折り紙〉以外で使うことあるのかな? 家具や建材系でも使えるか?」
2メートル四方にもなる紙を前にして、それだけで少し満足してしまう。
「先に〈細工〉で色付けた方がいいのか? 折ってからの方がいいか? さすがに先には無理か。複雑すぎるな」
作ろうとしているのは四本足の翼竜である。スキルのアシストで図面はわかるのだが、手順はさっぱりわからない。
「スキルに任せてやってみるか」
作業は信じられないくらいスピーディに進んでいった。折り目に神経を使う必要もなく、テキパキと折られていくのだ。
それでも完成までには20分ほどを要した。
「できたー!」
「すごーい! ドラゴンだ!」
マリーもずっと横でわくわくしながら見守っていたこともあり、興奮気味に完成したドラゴンを見つめる。
完成品は〈折り紙〉と呼ぶにはあまりに巨大に思えた。マリーよりはさすがに小さいが、60~70㎝ほどもあり、ラフといい勝負である。
「んー。傀儡で操ったところで微妙か。さすがに観賞用だな」
その後、〈細工〉のスキルを使って細部に色を入れると、フィギュアを棚に飾るようにハルマ宅のリビングに鎮座することになるのだった。この際、紙に〈細工〉を施したことでスキル〈紙細工〉を取得したこともあり、ドラゴンはより勇ましい姿になっていた。
ついでに取得したスキルに時間を取られたが、ようやく本題である。
何も、今さら抽出機を使ってMPポーションを作る気はない。そもそも、ドレインでの作製の方がまだ効率的である上に、効果も高い。
では、紙を何に使おうというのか。
「最近出回ってる効果の高いハイポーションって、たぶん抽出機使ってると思うんだよな」
アルヒ草と水系素材で作るポーションも、最初の頃はHPを30回復できれば上等だったのだが、ここにきて45まで回復できるものが出回っていた。すでに多くのプレイヤーがそれでも回復量が足らなくなってきていることもあり、ハイポーションに需要は移っているのだが、自分が作るものよりも効果の高いものは自然と気になってしまうものだ。
最初は、これもドレインで効果の高い物が作れるのではないかと思ったのだが、HPとMPでは概念が違うらしく、素材から直接回復力を引き出すことはできなかったのである。
とはいえ、ハルマの場合、レベルが30に届こうかという段階でも未だHPは120に達していないほどである。そのため、ダメージを受けることはそのまま死を意味することもあり、ポーションを使うことがなかった。今までダメージを受けずにしのげて来たのも、ひとえに優秀なボディガードに囲まれているからだった。
自分で使うことがないからと、ポーションの作製は蔑ろにしてきたところはあったのだが、これから〈魔王迷宮〉に挑もうとしているチップ達には必要になると思われた。
というのも、〈魔王迷宮〉の攻略には持ち込める消費アイテムの数に制限が設けられているからなのだ。
ハルマは通常の作り方でポーションを作り、最後に抽出機を使ってみる。
これにより、刻んで煮込んだアルヒ草をきれいに取り除くことができ、より純度の高いポーションになるのではと考えたわけである。
「やった。やっぱり抽出機使ってたんだな。MPポーション以外にも使い道があるとは思ってたけど、けっこう色んな調合で使うことになりそうだ」
出来上がったポーションのできに満足すると、ランクがひとつ上の素材に変わるだけで、作り方が同じハイポーション作りに励むのだった。
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