第48話
待ち合わせ場所に向かうと、先にチップが到着しており、続いてシュンとアヤネもやって来た。
「この前はありがとうね」
シュンは朗らかな笑みを浮かべながら挨拶をしてきたが、アヤネはハルマよりも先にマリーに関心は移っているようである。
「やっほー! マリーちゃん。おねーさんに会えなくて寂しくなかった!?」
「キャハハハハ! アヤネ、やっほー! 別に寂しくなかったよ?」
「えー、そうなのぉ?」
噛み合ってるのか噛み合ってないのかわからないやり取りを続けていたが、追加メンバーもやってきたらしい。
「よお、ハル君。久しぶり!」
気さくに声をかけてきたのは、ハルマと同じような体型をしたショートボブが似合う女性だった。スラリとした体型に違和感が生じているのは、背負っている大きな両手斧のせいだろう。
この女性、チップの実の姉であり、弟に負けず劣らずのゲーマーである。
「お久しぶりです、スズねえ。今日はよろしくです。そちらが、スズねえのパーティメンバーですか?」
スズねえことスズコの後ろには、巨体が嫌でも目に入る大楯を背負った男性と、それに隠れるように立つ、腰まで伸びた髪が印象的なローブ姿の女性がいた。
「ねーちゃんはシュンとアヤネも知ってるよな? 大楯持ちの人がゴリさんで、かわいそうなことにねーちゃんの大学の後輩。リアルでアメフトやってた人だから、めちゃめちゃ頼りになるぞ。で、ミコトさんはアヤネと同じ回復メインの魔法職。ハルマは会ったことなかったっけ?」
「あー、あるある。ミコトさんだったんですね」
「こ、こんにちわ、ハルマ君。1年ぶりかしらね?」
体型はリアルが反映されるが、顔は設定で変えられるためすぐには思い出せなかったが、面影は残っているように感じられた。
「よっしゃ! みんなそろったことだし、早速行こうか。見つかるといいね」
全員の挨拶が済んだところで、スズコが率先して行動に移る。
「へぇー。その子がマリーちゃんね。チップから聞いてはいたけど、面白いことになってるのね。にしても、女の子なんだからもうちょっとオシャレな服を着させてあげたら?」
「‼ 先輩の口からオシャレなんて言葉が出てくるなんて! ホントに女性だったんですね!」
「おい、ゴリ。どういう意味よ」
「いやー、だって。常日頃モンスター追いかけて、斧振り回してるんですよ? 男とか女とか超越した、そういう種族かと思うじゃないですか?」
「ふふふ……。スズちゃんだって、たまには女子大生らしくケーキバイキングに行ったり、ウィンドウショッピングで一日潰したりするんだよ?」
「まったく、ゴリは今度しばくとして、どうにかしてあげたら?」
スズコはそれぞれ意味合いの違うジト目をふたりに向けた後、ハルマに視線を戻す。
「いやー。考えてはいるんですけど、普通の服だとダメみたいで、探してるところなんですよ」
「なんだ。ちゃんと考えて上げてたのね。なら、いいわ」
道中は和気あいあいとした雰囲気で歩いていた。
遭遇するモンスターもいたが、チップとスズコの姉弟によってあっという間に駆逐されていくので、気にする必要も感じられないまま目的地へと到着したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます