第16話
「魔法、スキルの店は……っと」
図書館を出て、その足で目的の場所へと向かう。
こちらは、ちゃんと大通りに面しており、最初に散策した時に把握していた。
しかし。
「それっぽいの、ないな」
ウォータニカにある専門店では見つからず、その後もいくつか町を巡って、闇の大陸の初期エリアにあるダークッタンの町でようやく見つけることができた。
「ドレインの書。これかな? うん。これなら俺でも使えそうだな」
『HPドレイン/対象のHPを吸い取る。HPリバース/吸い取ったHPを譲渡する』
『MPドレイン/対象のMPを吸い取る。MPリバース/吸い取ったMPを譲渡する』
『ダメージドレイン/攻撃をガードした時、受けるはずだったダメージを蓄積し、ダメージリバースを使うことで、任意のタイミングで放出することができる。戦闘が終了すると蓄積していたダメージは消失する』
『ドレインの心得/攻撃をガードした時、相手のステータスをランダムで2吸い取る。戦闘ダメージを受けると解除される』
たいていは、こうやって魔法とスキルがセットで覚えられるのだが、スキルと違い、INTの数値によってセットできる魔法の数には制限があった。厳密には上限が決まっているわけではないのだが、使える数に限りがあるという意味では存在する。
「INTが低いから魔法は強い使い方はできないだろうけど、MPポーション作るのが目的だからイイか。スキルの方はどっちもパッシブ――常時発動――に近いな。DEX高いとガード率高くなるはずだから相性いいかも。とはいえ、今のガード率って、がんばってもせいぜい10%くらいだからあんまり強くは使えないか」
反射神経や読みを駆使したプレイヤースキルの部分である程度ガード率を上げることはできるが、それにも限界がある。ガード率100%までなればほぼ無敵となるが、35%くらいがマックスであろうと言われている上に、物理的にガードできない魔法系の攻撃に関してはそもそも意味をなさない。
ただし、盾系統のスキルなどには、こういった魔法系の属性攻撃にも対処できるものが存在するようである。
「とりあえず、MPドレインを試してみるとしよう」
効果的な使い道が他に思いつかなかったため、当初の目的であったMPポーション作りを試してみようと再びウォータニカに戻ると、調合ギルドへと向かうのだった。
……ところが。
「空いてない……な」
目的地に到着して、いざ始めようと思ったが、どこも他のプレイヤーが使っていた。しかも、誰もかれもが抽出機らしきものを使っている。
「あれが抽出機か。ドリップコーヒーみたいだな」
紙が必要になる理由も理解した。
見ていると、すり潰したマギアのつぼみに湯を注いでMPを抽出し、水の入った小瓶に移し替えていた。
イメージとしては、ドリップコーヒーを使ってコーヒー牛乳を作っているみたいな感じだろうか。
「しかし、困ったな。待ってる人も多いから、しばらく空きそうにないぞ。これだったらダークッタンに残って、あっちの調合設備使った方が良かったかな。それとも、どこも似たようなものかな?」
ハルマの予想通り、今はMPポーションに乗り込むプレイヤーで溢れているのだ。性能が低いわりに高額なアイテムだが、遠出をしようと思ったらMPポーションは欠かせない。強さを増すモンスターの討伐にも、需要は高まる一方なのだ。
いくら作ってもすぐに売れるため、今のうちに儲けようと普段は生産職に目も向けないプレイヤーまで手を出している状況なのだ。
ちなみに、この副作用として、素材となるマギアのつぼみと水系素材、抽出機と紙のレシピにかかわる素材の価格も跳ね上がっている。
こういうところは、MMORPGならではの現象と言えよう。
「ギルドの他に設備があるところは知らないんだよなあ。設備を売ってるところは知ってるけど、設置できる場所がない。いや、これを機会に拠点を探してみるか? いつまでもマリーに邪魔されながらギルドを使うわけにもいかないしな」
過去にプレーしたMMORPGだと、住宅地用の専用サーバーが用意されていた。しかし、今のところそれらしき場所への出入り口は見たことがなかった。
「ない、ってことは、ないと思うんだけど……」
ハルマは人で溢れる調合ギルドを後にすると、あてもなく町中をうろつくのだった。
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