第221話 見誤った末路

「どうなってやがるッ!?」


 指示を出していた傭兵頭も戸惑いを隠せない。


 ことごとく消されていく傭兵たち。


 相手はただの平民の少年一人と女が二人。


 そう聞いていた。


 金払いのいい、簡単な仕事だと思っていた。


 それが蓋を開けてみれば、仲間がどんどん消されている。


「また、三人やられたぞ!」


 傭兵頭の隣にいるマーキングした者たちと意思疎通をすることができる《トランサー》が報告してくる。


 マーキングが減るたびに報告してくれるが、それが傭兵頭の焦りを増幅させる。


 《トランサー》の彼も混乱していた。

 聞こえてくる声はどれも苦悶の声。


「また減った!」


 仲間がやられていくことに苦悩する傭兵頭。


 契約は成功報酬。


 前金も貰っているが、それでは今回の損害は賄えない。


「このままじゃ――」


「わかっている!」


 これ以上の損害は出せない。


 傭兵頭は決断した。


「ああ、くそっ! 撤退だ!」


 傭兵頭の指示を伝達能力の《トランサー》が生き残っている全員に伝える。


 しかし、その判断は遅すぎた。


「……こ、これは……」


 伝達能力にはマーキングした相手がいれば感覚的にわかる。


 その感覚がどこにもなかった。


 傭兵頭が決断するまでの数秒の間にその感覚が消えてしまったようだ。


 これは全員がやられたということ。


 全滅だ。


「もう、誰も――」


「お前たちのどちらがリーダーだ」


 伝達能力の《トランサー》が傭兵頭に伝えようとしたとき、背後から別の声が聞こえてきた。


「だ、誰だ――ッ!?」


 傭兵頭が問いかけたのと同時に蹴り飛ばされる。


「ぐあッ!」


 そして、伝達能力の《トランサー》は手刀で首を跳ねられた。


「なッ!?」


 冷徹な動き。


 あっさりと仲間が殺された。



 その光景に恐怖を覚えた。


 一瞬で命を刈り取るところを眼前で見た傭兵頭には、少年が死神に見えるのだろう。


 顔は引きつり恐怖に染まる。


「おい、お前が親玉だよな。どの貴族からなんて言われてきた」


「…………」


 恐怖によるものか。


 それとも最後の抵抗なのか。


 口を開こうとしない。


「言う気はないか……」


 そう言うと琉海は傭兵頭の腕を掴んだ。


 その瞬間、バリッという音と共に傭兵頭の体が痙攣した。


 そして遅れてくる激痛――


「があああああぁぁぁぁ!」


「防音済みだ。いくら騒いでも外には聞こえないから安心しろ」


 体の中から焼けるような痛みに傭兵頭は声を上げ続けた。

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