第213話 波乱の前の逃走
医者の青年が触診している間に琉海たちはその場を離れていた。
「はあ、ここまで来れば大丈夫よね?」
スミリアはそう言って背後を警戒する。
後を追ってくるような姿は見当たらない。
追手が来ていないことが確認できて琉海たちはひと息ついた。
ひと息ついたことで安堵したのかリーリアが口を開く。
「ごめん」
計画失敗のきっかけになりかけたことに申し訳なさを感じたのかリーリアが謝った。
「あれは仕方ない」
人の多い町に来たことのないリーリアは、帝都を歩く中で若干のおのぼりさんになっていたのは否めない。
「まあ、たまたまかどうかはわからないけどな」
「どういう意味?」
琉海の言い方に引っかかったのかスミリアが聞いてくる。
「俺たちが店を出たとき、先頭を歩いていたのは俺だ。その後をスミリアとリーリアが続いていた。もし、出合い頭でぶつかるなら俺のはずだ。あっちが
(まあ、偶然じゃなそうって思ったのはそれだけじゃないんだけどな)
琉海は喫茶店の2階のラウンジで食事をしていたときにあの男たちを見かけていた。
琉海たちがいた店の前の通りをウロウロしていたのだ。
(視線を感じたから、注意を払っていたが、まさか目的が夜伽の相手探しだったとはな)
計画に勘づいて琉海たちを探していたわけではなかったようだ。
視線を感じた時にフードの隙間からリーリアの顔でも見えたのだろう。
魔道具を使ってハイエルフであることを隠せてもエルフ族特有の美形は隠せない。
それがあの貴族の男のお眼鏡にかかったのだろう。
食事中だったのもあって気が緩んでいたのも原因かもしれない。
(まあ、ハイエルフであることは魔道具のおかげでバレることはなかったから大惨事にはならなくて済んだか)
明日の早朝には帝都から離れる。
(もう会うこともないだろう)
琉海はそう結論付けた。
「何はともあれ、あれに構っている場合じゃない。さっさと準備を済ませてしまおう」
「ええ、そうね」
「わかってる」
リーリアとスミリアは頷いた。
町の騒ぎ具合からも計画が順調に進んでいると推察できる。
後は収容所に向かい、エルフたちと捕まっているだろうアンリを救出するだけだ。
琉海たちは食料など不足している物を調達して帝都を出る準備を進めた。
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