第96話 準決勝の相手
琉海が準々決勝を勝利し、準決勝に駒を進めた。
明日から準決勝と決勝が始まる。
屋敷に戻る馬車の中でティニアたちと明日のことについて会話をしていた。
「準決勝はイロフとですね」
アンジュが琉海にどう戦うつもりですかと聞きたそうに視線を向けてくる。
琉海が口を開こうとしたとき、先に静華が疑問を口にした。
「あれ? 準決勝の対戦相手ってまだ決まっていませんよね」
準決勝の組み合わせは明日の朝に発表されるはずなのだ。
アンジュがその組み合わせをいま知っているのはおかしい。
「ああ、そうでしたね」
アンジュは思い出したように言う。
「準決勝に進出した三人の中に前回の優勝者がいたら、その者は無条件で決勝に上がる仕組みになっているんです。今回、準決勝に前回優勝者のグランゾアがいるため、グランゾアは決勝進出が決まっていることになります」
「なんか、それって不公平ですね」
「大会とはいえ、多くの権力が絡んでいますからね」
静華の辛辣な意見に苦笑いで答えるアンジュ。
ちなみにこのルールを作り出したのは、この国の王族らしく、誰も反対することができなかったようだ。
そして、王の元に強い兵士は集まるため、権威を示す舞台として現在も機能している現状、王がこのルールを取り消す理由もなく、現在まで残っているようだ。
「そういうことですか。でしたら、私の明日の相手はイロフという方になるんですね。どんな戦い方をする人なんですか?」
琉海の質問にこの中で最も戦闘に詳しいアンジュに視線が集まる。
「そうですね。イロフはホルス騎士団の部隊長をしているのは知っていますよね」
「はい」
アンジュの確認に琉海は頷く。
「イロフは力で戦うより知略で戦うことで有名な騎士です。ホルス騎士団内でも隊長を務める傍ら、参謀も務めているようですから、作戦を立てることに関しては得意なのでしょう」
「つまり、パワーで押せば倒せるといことですか?」
静華が興味津々に聞く。
「いえ、力だけで押したら、それはそれでその力を利用されてしまう可能性もあるので、力で押せばいいとは一概には言えませんが……」
アンジュはそこで琉海に視線を向けてくる。
その意図がわからず琉海は首を傾げる。
「ルイ様なら策略をものともしない力を持っているようですから、力で押しても問題ないかもしれませんね」
琉海はなるほどと内心で頷く。
「アドバイスありがとうございます」
アンジュに礼を言い、琉海はアドバイスを元に明日はどう戦おうかと考えようとしたとき。
「最近のアンジュはよく人を褒めるよね」
メイリはニヤニヤしながら、アンジュに言った。
その表情でからかっているのがわかる。
「べ、別に褒めれないわけじゃない。私の周りに褒めるに値する人間がいなかっただけだ」
「はいはい。ルイ様は本当にすごいですよね」
顔を赤くするアンジュにメイリはクスクスと笑っていた。
アンジュとメイリのやり取りは続き、馬車内が少し騒がしくなるがいい雰囲気だった。
静華もティニアも笑みを浮かべている。
ふと隣に座るエアリスに視線を向けると窓の外を覗いていた。
「エアリス、どうかしたか?」
琉海は小声で聞く。
「なんでもないわ」
エアリスはそう言って、窓から視線を外した。
琉海は大丈夫かと思いつつ、エアリスが何でもないというので、それ以上聞かなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます