第41話 フードの女の正体

「知ってる人?」


「ああ、学校の先輩だ」


 学校の先輩と言われてエアリスは首を傾げているが、詳しく説明できないほど琉海の頭の中は混乱していた。


 正確に頭が処理できるように順序立てて疑問点について思考する。


 まず、なぜこの世界にうちの生徒会長――藤堂静華がいるのだろうか。


 異世界に飛ばされたのは、飛行機から落ちた自分だけではなかったのか。


 この疑問に対するか答えはない。


 あまりにも情報が少ないからだ。


 様々な疑問が頭の中を駆け巡るが、やはりどれも情報が足りなかった。


 黙考して十数分。


 もし、飛行機の中にいた静華が異世界にやってきているとしたら、琉海の幼馴染――雫や刀香もこちらの世界に来ているかもしれない。


 だが、日本人がこの世界で生き残るには、奇跡的な巡り合わせがないとすぐに死んでしまう。


 平和慣れしてしまっている日本人にはあまりにも厳しい世界だ。


 そして、日本の文明よりも数段劣る世界のため、適応できなければ淘汰される。


 また、生きていたとしても、最初に出会った相手が悪ければ、奴隷にされる可能性もある。


 この世界に放り出された瞬間にほとんどの生死が決定すると言っても過言ではない。


 雫たちがどうなっているのか焦燥感に駆られるが、急いでも仕方のないことだと自分に言い聞かせ、心を落ち着かせようと深呼吸した。


「ルイの知り合いがこの世界にいるってことは、一緒にこっちに来たってこと?」


「そういうことになるのかもな。詳しくは会長に聞かないと何とも言えないけど……」


 琉海は飛行機の外に投げ出され、空中で気を失ってしまって、飛行機が最後どうなったのか知らなかった。


(飛行機の中にいた会長なら、飛行機がどうなったか知っているかもしれない。少なくとも俺よりは詳しいだろう)


 もしかしたら飛行機ごとこの世界にきているかもしれない。


 それなら、雫たちの居場所を知っている可能性も高い。


 知っていればそこまで案内してもらおう。


 色々と仮定をしてみるが、結局目を覚ましてもらわないと話が進まないという結論となる。


 何はともあれ、目を覚ますのを待つしかない。


 じっと待っていてもどうしようもないので、琉海は夕食を食べるために一階に下りた。


 女将さんに再びお礼を言われ、「サービスです」と言ってどんどん机の上に料理の乗った皿が並べられた。


 今日の夕飯はちょっと豪勢だった。


 女将さんがお礼を兼ねた料理のようだ。


 どの料理もおいしく、ひと時の間だけだが、焦っていた心を静めてくれた。

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