第17話 集団

 琉海たちが家で話していた頃。


 馬に騎乗し、村に近づく集団がいた。


 村からはまだ分かりづらい距離。


 数は十五人。


 全員が深々とローブを着用し、正体を隠すようにしている。


 その中の後方の一人が隣を並走する仲間に声をかけた。


「あれが目的地ですか?」


「ああ、忌々しい村だ」


 遠くにうっすらと見える家屋。


「これってなんのためにやるんですか?」


「ああ、お前は新米だから知らないのか」


 任務で来ているのだが、任務の内容を知っているのは古参の者か地位の高い者だけだった。


 その他は頭数として連れられて来ており、詳細を知らされていない。


 ただ『村を襲撃する』ということだけが聞かされている。


「この村は呪われている村で、自然を枯らしたのもこの村のせいだって話らしい」


「そんな村があったんですか!?」


 新米の男が驚いて声を出すと――


「だから油断するなよ。お前たち。何をされるかわからないからな」


 話している二人の会話に前方を走る副隊長が割り込む。


「失敗は許されないからな」


 副隊長はそう言って最前線を走る隊長に視線を向けた。


 隊長の任務遂行率は多くに部隊がある中でもトップ。


 そんな経歴を持つからなのか、この任務を隊長に任せたのだろうと、部下たちは噂している。


 そして、この任務の失敗は許されないと上層部から釘を刺されていた。


 手綱を握る手に力が入る。


 後方で会話をしている部下たちを横目で見て、少し緊張感を高めようと副隊長は口を開いた。


「もうすぐ着く。無駄口はやめろ」


 油断は任務の失敗率を上げる要素でしかない。


 ただの村を攻めろと上層部が命令するはずがない。


 何かしらの危険要素があるはずだ。


 損害はできるだけ少なくしたい。


 兵はすぐに鍛えることができるわけではないからだ。


 今回の任務を経験することで、次の任務での生存確率が上がる。


 不安要素として村の詳しい情報を取れていない。


 副隊長としてはもう少し情報を精査してから攻めたいと思っていたが、この部隊を率いる隊長の性格もあり、情報なしでの特攻となっている。


 隊長は問題ないと言っていたから、何かしらの情報を持っているのだろうけど。


 副隊長は前方を走る隊長の背を見た。


 フードで表情は見えないが、周囲を威圧するような気配は感じられた。


 この状態の隊長に逆らうようなことをすれば、死は免れない。


(無駄な思考はやめよう)


 手綱を強く握りしめ、腰に差している剣に振れる。


 装備があることを確認した後にため息を静かに吐いた。


 任務に集中する。


 油断が死に直結している。


 この先は戦場だ。

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