マザー #詩コン 電


マザー



それが月光花の

残影だとしても、

一瞬の焼き付きだとしても

映写機は残された

箱舟に伝染(でんせん)する

救いを求めることができるのなら

まだ選択肢は残されているのかもしれない

攀(よ)じ登るのだろうか、聞き届けるのだろうか


オシロスコープの波間と生命維持装置の共鳴にて

發音体

上ずった音色で、はては極楽浄土へ飛翔する

ゆっくりと解されては 糸の意図までわずか

揺り籠ごと鎮む 天界からかいなを垂らして

いる ときの、

はて。誰がらくに、

しがみつくというのか

地面(じづら)に配置された屈強な編み機に

過去の残滓を綻びとを力を併せて

埋め込まれたペースメーカーとも ふいごとも 想われ

意味の無い送電線上に集う

それは、たかがてのひらのうえだった。

握り返して 贈った だけの、あいだがら

少しも珍しくはない あたりまえのはずだった。

烏(カラス)の群れには首がない

電波塔までの距離が一向に縮まらない

絡まるよう、よく 錆びた指先でも 折れた針を戻す

     

このたびは もうしわけない ていどに

現される 月夜の盆の お里がえりに

うたへおどれの レクイエムを 描いては いた

楽譜への 混濁が みられて。


蓄音機に ソノシートを乗せて 手回しをする

簡単なつくりごと、行く先不明のプラレールに接いで

独居老婦人の優雅なしらべは、今 万華鏡と魅せる


砂時計は星界の反転を拒んでいたか 

だが走り出したトロッコは無人のままだ


しかし今微動だにしない 熱の冷めきった 蝋の肌には

詰まっただけの血潮も膿んでは

ゆらゆらと、漂うのはなんであろうな。

そのうち腐っていくことは、予想すらならなかったか。

信じたくはなかった なんて、そんなもんだろうと 今更、

言い聞かせても


ただただ、帰りたくて乗り込んだ

でも会いたい人はいませんか なんて

未来へ

生きているのか、死んでいるのか

もしこれが嘘でも、本当でも

宇宙まで届きそうなかいなの先に魅せたいものがいる


使者たちの これは岐路の記憶

プラグの削げた 吹きっ曝しの青空に 繋ぐような パルス

あのひ、

ただなんもない くらがりに にた いっぽんすぎの

いなびかりが なみだした だけの。

      

蓄熱をやめただけの轟き

信号は黄色の点滅。



#詩コン 電


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