みちしおどき


 いつかの境界線に経つ 山門の、拠り所は狭苦しく通り抜ける。

 すがらの今日も満月は絆されては吊られ射る。また一段と赤くあたたかく沈み翔る太陽より、艶めかしく毒される紫空に寄っていくつかの物々しさも猛き鷹る。

 闇は苦楽も伴に山海を駆け魅せると標す。

 今宵の山肌を鬱血した華華しい曼珠沙華や、ひそりと彫られいく鬼灯の 編みかけのお縄がこれも朱色に結ばれ か細い糸を飼わせておくかのよう戯れに撓み、しとりと延した蚊帳に囚われた懐に揺られ かの女郎蜘蛛と、憂いたままの天病、轟くばかりの斑の和金たち。

 庭には2羽白鳳が、喉輪を咲かれた鉛丹に更々に吊るされ、抜穫れ要る最中でぶらぶらと空腹の時を今かと こさえている。柔らの風に生え揃いはじめた芒の影がぼおと浮いては涼むものたち、縁台にていまだ残香にあり。

 どれもあなたという空の魅せるかおを覗かせ、今も鼻につく 焚かれてもいないのに 朦々とはばたきを催すような 心地にさせて、あゝ 昏れますように。

 夏の終わりのこと あれは何事にもとらわれることのなく、清々しく晴れやかに在る、落葉と地る、あわれ叢る。

幻を魅せている、開く事の無い眦が、点した緋雨の、見ず知らずの言ノ葉と 祈る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る