中空蘭鋳

中空蘭鋳

ヱ昊稀




なみせんを もがき ふけることは

およげない たましいの あぶくたちの

うまれたら いいのだろうと きりのない

もやのなかであって しまったことです。


えらく傷ついた古鯨の少しの命を垣間見て かわのそこに訴(うた)うたう 地に這う砂礫の、一粒にひとり。あの世から座礁した人間の、便りない夢が光る。海岸線に 犇めく波の花 それもまた 解けてしまう先行きの 愚かな 暖かな逝きでした。 届かない天に思いをそらし、一噴きに翔ける ただのちしお。大量に打ち上げた 地上のいのちを ひとのみにする、開眼船上に夢を たゆたえ 褪せていく こと。夜明けの残骸が、私 底に横たわるともう 海はかれて無く、溢れいく そのうちがわ 僅かな息吹が 時を戻す。祈りが風と 戦い逝っても 底に天天が転じるよう 黒い円らのプラットフォームと番い、添い寝する いつだって 傍の影の躰で 言ってしまう未来。いつかの、深き森の、始祖の泉にのみこまれるときわたしは、わたしじしんを、特異に恥ることは ないのだけれど


嘘ばかり抜け殻に残って、記憶が縫い付ける世界 星界のしらべ

呑み込めない整を求めてあえぐ、綺羅星の葬列

あれは、中空蘭鋳の群れ。

破裂した頭蓋を重たそうに模せる

狂った陽時計の翳をも停めて

チの つながらない、あなたの子 産みの底は

いつか、必ずや。地獄に還ります

終焉の来ない夕暮れに追い縋る緑児たちの夢を

永遠に閉じ込めている様々な彩りを持って

輝かせゆく シリウスを捜して欲しいのです


焼け爛れた星辰を。ひとつだけ ひと つまみ、のみこんでいった

死の棘が、誰の目にもくるおしく、顔を背けて、にじりよってくる

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