第四章 勇者となった女友達と元カノもいる勇者パーティー(有象無象)

第102話 麗蒼達に会いに行くか

 「麗翠れみ……どうだ? 直ったか?」


 ネグレリアを倒して、既に三日以上経過していた。

 本来だったら、既に麗蒼れあへ会いに行くためにロールクワイフ共和国へと着いているはずなのだが……。

 俺達二人はまだ、アルレイユ公国内の麗翠が所有している家にいた。


 「ふう……ようやく、直ったよ」

 「ありがとな麗翠。おお……凄い。新品みたいになってる」


 俺達がまだロールクワイフ共和国へ向かっていない理由。

 それは、俺が使っていた防具がネグレリアに壊されてしまったからだ。

 新しい防具を買うことも考えたが……この防具以上の質の防具が市場には出回っていない。


 元々、ボルチオール王国の貴族から貰った代物だしな、この防具。

 そりゃ、市場なんかにこの防具以上の性能の防具が無いわけだよ。


 更に俺は、この防具を着た状態で様々な武器や防具関係の女神の加護を複数人の元クラスメイトから奪ってしまったので、恐らくこの防具に多くの女神の加護が付与されてしまった。


 となると、俺はこの防具をこれからも使わざるを得ない。

 幸い、麗翠の女神の緑イーリス・グリーンの回復魔法が、イーリスの力で作られた物か、女神の加護の力が含まれてさえいれば、物にも使えるとのことなので、防具の修理を頼んだのだが……。


 「ごめんね、じん……大分時間かかっちゃって」


 麗翠は申し訳無さそうに謝ってくる。

 

 ……魔王軍幹部のネグレリアの攻撃を思い切り食らって防具を壊した上に、家事は全て麗翠任せ、セトロベイーナ王国の様子を見に行きたいから、麗翠の転移魔法でセトロベイーナ王国の様々な場所へ連れて行ってもらうなど、防具を直すのに三日以上という時間を要したのは、間違いなく俺のせいだから気にしなくて良いのに。


 「いやいや……俺こそごめんな。この三日間何もしないだけじゃなく、麗翠に色々させて」

 「……神堂くんの言う通り、私はネグレリアとの戦いで何もせずに見てただけ。だから、私はもっとしっかり仁のサポートをしなきゃいけないのに……何でこんなにも出来が悪いんだろう……」

 「…………」


 相変わらず、麗翠の自信とメンタルは回復する気配がない。

 むしろ、神堂にただ見てただけとか、人間として成長していないとか色々と言われたせいで、ますます自信を無くし、メンタルが更にぶっ壊れた気がする。

 マジで神堂……余計なことをしてくれたぜ。


 「気にすんなよ。神堂は元の世界でもあんなもんだったろ。俺は麗翠のサポートに不満なんか持ってない」

 「仁に不満を持たれてからじゃ遅いの! だから、私はもっとしっかり仁のサポートを出来るようにならなきゃいけないの!」

 「…………」


 あのー……ここまでのやり取り、三日連続でやってるんですが。

 麗翠さん、気付いていらっしゃらない?

 逆に、麗翠さんのネガティブさに不満を持ち始めて来ましたよ俺は。

 家事を麗翠に任せきりの俺が不満を言う権利なんて本来は無いけど、ここまで来るとなあ。


 今は二人きりだから良いけど、麗蒼や元クラスメイトの連中の前ではこういうことを言うの辞めてもらいたい。

 俺が麗翠をこき使っているようにしか見えないからな。

 元の世界での俺と麗翠の関係性も相まって。

 

 特に麗蒼の前でだけは、麗翠が俺に対して必死で謝ってくる姿を見せたくない。

 本当に面倒なことになりそうだし。


 ……まあ、まだ今はマシな状態だろ。

 泣いてないから大丈夫だ。

 ……多分。


 「……よし、麗翠のおかげで防具も直ったし、麗蒼達がいるロールクワイフ共和国へと行こうか。麗翠は準備大丈夫か?」


 特にこれ以上、麗翠を励ます言葉はかけない。

 かけた所で、違うの! とか言われるだけだからな。

 だからといって、ネガティブ過ぎるのウザいんだけど……とか言ったら、取り返しのつかないことになりそうなんでね。


 スルーが一番なんだわ。


 「大丈夫。ロールクワイフ共和国は何回か行ったことがあるからすぐにでも行けるよ。仁こそ、本当に怪我治ったの?」

 「治ってなかったら、こんなに喋れるわけがないだろ。肋骨折れたらマジで喋れなくなるからな?」

 「私は肋骨折ったことないから分からないけど……怪我が治ってるのなら良かった。それなら、行こっか」


 麗翠は安堵の表情を浮かべ、女神の緑を抜く。

 さて……俺は目を瞑らないとだな。


 「トランスファー」


 麗翠が転移魔法を唱え、また俺達はいつものように強い光に包まれる。


 ……麗翠が何度も行ったことがある国のため、あっという間に光がすぐに消えていく。

 目を開けると……そこは……。


 ……そこは。

 な……なんて言えば良いんだろう。

 ボルチオール王国の王都カムデンメリーほど、人で賑わっているわけでもないし、発展してもいない。

 だが、セトロベイーナ王国の王都チェンツオーネほど、人通りが少ないわけじゃないし、発展していないわけでもない。


 普通。

 そんな言葉が当てはまってしまいそうなほど、特になんの特徴もない街の光景が広がっていた。

 無理やり例えるなら……ファウンテンレベルの街かな?


 「ここが、麗蒼達がいるロールクワイフ共和国の首都、ラルンハーセスだよ、仁」

 「うえっ!? ここが首都!?」


 ファウンテンレベルの街だと勝手に思っていた俺は、麗翠の言葉に驚くしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る