第275話・露天風呂とイリタビリスの才能(1)

イリタビリスに抱えられたままプリームスは隣の部屋まで来ると、オリゴロゴスと鉢合わせしてしまう。


「うお!?」

と驚いて声を上げるオリゴロゴス。

それは半裸のプリームスをイリタビリスが抱えていたからだ。



「師匠! 見ちゃ駄目です!!」

そうイリタビリスに叱責されて、オリオロゴスは慌ててそっぽを向く。

師匠の威厳形無しである。

一方プリームスとしては見られた所で減る物でも無いので、叱責され損のオリゴロゴスに申し訳ない気分だ。



そのまま勢いに任せてイリタビリスは家の奥に進んでいく。

場所は玄関と対面の部屋先で、何やら台所の様な場所を過ぎると屋外に出た。

屋外ではあるが石畳が伸びていて、イリタビリスはプリームスを抱え器用にサンダルを履くと、その上を歩いて進みだす。


石畳は5m程の短い物で、それが途切れた先には垣根で囲われた敷地が目に取れる。

何やら湯煙のような物が見えるので、この垣根の内側に温泉があるのだろう。



イリタビリスは楽しそうな表情でプリームスへ説明する。

「ここはね師匠が趣味で作った露天風呂なんだよ~。時間が腐る程あったから、凝って作れたって言ってた」



垣根を越え露天風呂の敷地に入ると、プリームスでも見知らない風景が広がっていた。

露天風呂の広さ自体は、5m四方で極端に広い訳では無いが2人で使うだけなら広すぎる位だ。


そして湯舟は地面へ2m四方に掘って作ってあり、木の枠で囲っているので何とも言えない柔らかな趣がある。

また床は石畳になっており滑り止めと水捌け考慮してか、花崗岩などでは無く軽石の様な石材を使用していた。

リヒトゲーニウスの王宮にある温泉も良かったが、あちらは厳かな雰囲気があり少し気分的に窮屈に感じるのは否めない。



「これは素晴らしいな・・・広すぎず狭すぎず落ち着いた雰囲気で、寛ぎやすそうだ」

プリームスが素直な感想を言うと、まるで自身の事の様に自慢顔になるイリタビリス。

どうやらイリタビリスは、自身の身内が褒められる事に喜びを感じるらしい。



『では、本人が褒められればどうなのかな?』

プリームスがそう思っていると床に下ろされ、イリタビリスは隅でサッサと服を脱ぎだしていた。

隅には棚と簀子すのこが設置されていて、脱衣場の機能を果たしていた。



イリタビリスは服も下着も全て脱ぎ全裸になると、

「何してるの? プリームスも早く下着脱ぎなよ~。持ってる着替えとタオルは、この棚に置けば良いから」

そう言ってプリームスを真正面に見据える。


イリタビリスの姿は引き締まっていて肉食獣を思わせた。

だが柔らかな曲線と大き過ぎない膨らみが、成長途上である少女を示していて、中々に魅惑的な身体をしていたのだった。



『ほほう、これは子供っぽいかと思っていたが・・・・着痩せする質なのか・・・・』

素直に綺麗な身体をしていると感じたプリームスは、率直に口に出してみる事にする。

「イリタビリスの身体は引き締まっていて野性味があるが、とても綺麗で女性的でもあるな」



すると戸惑った様にオロオロするイリタビリス。

「え?え? あたしが綺麗?!」



「そうだよ、イリタビリスはこんなにも美しくて綺麗だ」

着替えとタオルを棚に置き、プリームスはイリタビリスに寄り添う。

そして何かを確認するように、その野性味を感じさせる身体に指でソッと触れた。



「え? 何? プリームス・・・くすぐったいよ」

他人に触れられるのが慣れていないのか、イリタビリスは不安そうに呟く。

だが信用もしているのか、抵抗する様子は一切見せない。



次に背後から抱きすくめる様に密着し、優しく腹部と形の良い胸に触れる。

そうすると張りと弾力を有する肉感が、プリームスの掌や指先に伝わって来た。

『おおおぉ! 日頃から良く鍛えているのだろうな。この感触、見た目だけでなく実際の身体能力も随分と凄そうだ!』

とイリタビリスの肉体に感心する。



解析アナライズ

プリームスはイリタビリスの身体の仕組みが気になり、魔法を使ってまで調べることにした。

最初は魔力的な潜在力を調べたが、これは常人と同じだった。

魔術の才が顕著に出る髪色が黒の事から、予想通りと言える。



更に体内を循環し内包する気を調べた。

気には負と正──陰と陽の性質2種が存在する。

陰は主に体外への干渉に使用し、分かり易く例をあげるなら攻撃だ。


また陽は自己の肉体へ影響を及ぼす。

陽の気を体内に巡らせる事に因って回復を促進したり、戦闘時であるなら生身でありながら驚異的な防御力を得る事も可能なのだ。



そして予想通りイリタビリスの肉体には、陽の気が溢れんばかりに内包し循環していた。

『素晴らしい・・・この肉体は生命力に満ち溢れている。この陽の気を自在に操れるなら、相当に強固で長命な身体になるぞ!』



調べる為とは言え夢中になって弄った為、プリームスの腕の中で脱力状態のイリタビリス。

「あぁ・・・うぅ・・・プリームス・・・・」


慌ててプリームスはイリタビリスをその場へ座らせる。

「おおぅ! す、すまない・・・調子に乗り過ぎた。イリタビリスの身体が余りにも魅力的過ぎてな、夢中になってしまったよ」



イリタビリスは直ぐに正気に戻るとプリームスの下着に手をかける。

「嬉しい事言ってくれるわね!」

そう言って一気にずり降ろしてしまった。



「うお!?」



驚くプリームスなど余所にイリタビリスはそのまま立ち上がると、胸を覆う下着を一瞬で剥ぎ取ったのだった。

そうなれば大きくて形の良いプリームスの胸が露になり、その迫力に今度はイリタビリスが驚く始末。

「うわ! すっごい!!」



他に誰も居ないし、居た所で特に隠す気も無いプリームスであるが、覆っていた物が急に無くなると心細くなる。

無意識に少し前屈みになって身体を両手で隠してしまが、それをイリタビリスが許す筈が無い。


「好き勝手やってくれたわね!! 次は、あたしの番だよ~!」

などと言い出し、身体を隠していたプリームスの両手を奪ってしまった。



『うわ!? 何て馬鹿力!!』

そう内心で驚愕するプリームス。

組みつきは最大の弱点であり、こうなる前に本来なら回避すべきなのだ。

しかし敵意などイリタビリスに有る訳も無く、好意に因るじゃれ合いだけにプリームスは抵抗する術を持たないのであった。


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