第34話・二人目の従者探し(1)
プリームスはスキエンティアに抱きかかえられたままナヴァルに案内され、クシフォスの寝室に到着する。
スキエンティアがナヴァルに話した同じ内容をクシフォスに伝えると、
「な、なんだと!俺の屋敷の屋根でそんな事態が・・・」
と頭を抱えてしまった。
先程までほろ酔い状態だったクシフォスの顔は、若干青くなったように見えた。
自身の預かり知らぬ所で、プリームスが危険に晒されたのだ。
しかも自分は酔っぱらっていたのだから、危機感が無い所では済まない。
クシフォスはプリームスに頭を下げた。
「すまない、まさかあの死神アポラウシウスが関係しているとは思いもしなかった。でなくても死熱病の件は作為的だと分かっていたのに・・・。プリームス殿に直接危険が及ぶことまで予想出来なかったとは情けない」
横長の大きなソファーに横に寝かされたプリームスは、スキエンティアに膝枕をしてもらい漸く落ち着いた様子だ。
そして小さく片手を振ってクシフォスの言い様を否定した。
「いや、私の独断で招いた結果だ。クシフォス殿が謝る事では無い」
するとスキエンティアがクシフォスに笑顔を向ける。
「そうです、お気になさらずに。それよりもこのような事態を再発させない為に提案が有るのです。クシフォス殿に協力していただきたいのですが」
何を言い出すのかと様子を窺うプリームス。
クシフォスはすっかり酔いがさめた顔で大きく頷いた。
「勿論何でも協力するぞ! 言ってみてくれ」
コホンと咳払いするとスキエンティアは説明しだした。
「私が常にプリームス様のお傍に付き従うのは、今後難しい可能性が出てきます。そこで私に代わりプリームス様を守る人員を増やしたいと考えた所存です」
「成程・・・」と考え込んみ、
「スキエンティア殿程の実力がある人間を護衛に付けるのは、正直無理だな。そんな人間、この世界のどこを探しても居ないと思う」
と残念そうにクシフォスは言い切った。
スキエンティアは頷くと、自身の考えを告げる。
「そうでしょうね。ですから今すぐでは無く、準備をしたいのです。私やクシフォス殿に迫る程の、”才能”がある可能性だけで良いのです。そう言った若い人間を探し出して、私が1から仕込もうかと・・・」
少し驚いた様子のクシフォス。
同じく膝枕をされているプリームスも驚いた。
『まさかそんな事を考えていたとはな・・・面白い奴め』
クシフォスは瞳を閉じて思案し始め、そして呟くように話し出した。
「そう言う事なら、まだ色々と方法がある。となると・・・士官学校、傭兵ギルド、魔術師学園、後は奴隷だな」
「どれがお勧めですか? あまり時間をかけていては王都に出向くのも遅れてしまいますし」
と心配そうに尋ねるスキエンティア。
指を折りながら説明していくクシフォス。
「う~む・・・士官学校は駄目だな、金持ちのボンボンばかりだ。傭兵ギルドとなると、冒険者や傭兵は信用の問題がな・・・。魔術師学園はそもそも王都だし学生ゆえ従者にするのも難しい。奴隷が一番手っ取り早いかもしれんが、身元も保証出来んし犯罪者の可能性がある」
スキエンティアは溜息をつく。
「その中では一番奴隷がマシそうですね」
そして自分の膝に頭を乗せて目を閉じているプリームスに伺いを立てる。
「プリームス様、如何でしょうか?」
「私はスキエンティアの気が済むなら何でもいいぞ」
と興味なさげにプリームスは答えた。
再び溜息をついてスキエンティアはクシフォスに愛想笑いを向けた。
「とのことです・・・王都への出発が1日遅れてしまいますが、宜しいですか?」
「構わんよ。それよりも、この町に奴隷商が有るのを良く知っていたな」
と少し感心するクシフォス。
ニヤリと笑みを浮かべるスキエンティア。
「先程、1時間もかけてこの町を見回りましたから。流石、国境の町というだけあって規模は大きくありませんが、何でも揃っていますね」
「だろ! 俺の自慢の町だ。では、直ぐに寝て明日は午前中に奴隷商に向かうとしようか」
とクシフォスは立ち上がると扉の前まで進んだ。
そして特に何も言わずに部屋の扉を開ける。
早く部屋から出て自室で寝ろと言う事だろう。
苦笑いをしながらスキエンティアはプリームスを抱え立ち上がった。
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