29、おっぱい当たってますよ
「……うぷ」
気持ち悪い。
吐き気がこみ上げてくる。
俺の隣で、二葉先輩が申し訳なさそうに背中をさすってくれている。
「……ごめんね。わざとじゃないの」
「だ、大丈夫です」
「あ、あんなに回るとは思わなかったから」
先輩が、俺たちがさっきまで乗っていたコーヒーカップに、視線を送る。
くるくると回るカップをみているだけで、気分が悪くなってくる。
「内臓が……」
惨劇だった。
大はしゃぎした二葉先輩が、コーヒーカップを最大まで加速させた。やめてくださいという間も無く、完全に臓器をやられた。
頭が、ぐわんぐわんする。
「吐く。吐いちゃう?」
「大丈夫です、何とか……」
「ごめんね、ごめんね」
「先輩は悪くないです。悪いのは、コーヒーカップぅ……ぇ」
ギリギリのところで吐き気を堪える。あぶねぇ。
初デートで
そもそもあの回転速度を設定した遊園地側に、問題があるとしか思えない。人間の身体を何だと思っているんだ。一生恨む。
しばらくうずくまっていると、ちょっと落ち着いてきた。
「乗り物は、ちょっと休憩しよっか」
「そうしてくれると、ありがたいです」
「うーん……あ、あれは?」
「お化け屋敷ですか」
園内の隅っこにある小さな小屋を指差す。例によってチープな雰囲気で、ドラキュラのコスプレをしたスタッフが、おいでおいでしている。
「怖いの嫌い?」
「そんなことはないですが。先輩は?」
「行ったことないから、分かんない」
「じゃあ、行ってみましょうか。多分、そんなに怖くないと思いますよ。見た目からして」
「そっか。入ってみよっかな」
ホラーハウスと看板に描かれたそのアトラクションは、入ってみると、想像通り子供
入り口でドラキュラのコスプレをしてたくせに、井戸の中からひょっこりと現れたのが、一つ目小僧と言うのがまた安っぽい。
「……なんか雑ですね」
セットも、いくつか壊れている。
「見てください。このマネキン。落書きされている」
額にうんこマークが描かれている。
子供
しかし、先輩は笑うどころか、うんともすんとも反応しなかった。
いやに口数が少ない。
どうしたのだろうと、チラッと振り向くと先輩はうつむいて、地面を見ていた。
「先輩?」
「な、ナルくん」
「どうしました」
「こ、怖い」
腕に柔らかいものが当たる。
先輩はひしっと俺の腕に抱きついていた。
「は……離さないで」
ぷるぷると震えながら、先輩が俺の腕をギュッと
これは。
これは、たぶん、おっぱいというやつだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます