百三十二話 「優しさ」
優しさは世界にあふれている。
そんな言葉を
信じれなくなったのは
いつからだろうか。
自分ばかりが
損な役回りをして
理不尽な思いをしてる。
辛いことは
増えていくばかりで
減ることもない。
他の人は
私より楽をして
生きている気がした。
誰かに悩みを
相談してもなぜか
すっきりはしなかった。
優しさを探すのに
疲れていたのだと
思う。だって
探すより自分自身が
強くなることの方が
簡単だったから。
でも最近
優しさに触れたんだ。
本当にふとした時のことだった。
それは温かくて
まるで魔法のように
一瞬で心を満たした。
心から私のことを
思ってくれる人が
確かにいた。
自分のことで
いっぱいいっぱいで
きっと見えていなかった。
優しくされていたのに
これまでそのことに
気づけていなかった。
優しさは、受け取らなきゃ
形にならないから。
私が、優しさを消していた。
一つの優しさが
こんなにも心を
晴れやかにするから
もう一度優しさを
信じてみるよ。
そして、私も。
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