九十話 「支え」

今まで普通に

できていたことが

突然できなくなって

怖くなった。



どんなに頑張っても

前と同じようには

できなくて

涙が出てきた。



悲しかったんじゃない。



僕は元から

できることは多くない。

それは僕自身が

一番わかっている。



だから、僕は

できないことを

頑張るよりも

好きなことを



極めるという

生き方を

選んだ。それなのに

今、僕は止まっている。



この感情は

「悲しい」や「辛い」じゃない。

僕は悔しくて

仕方なかったのだ。



できない自分が、情けなかった。



今まである程度の

大変なことはなんとか

乗り越えてきた。

それなのにどうしてできないの?



大したことじゃないはずだ。

きっと僕の努力が

足りないだけだ。そう思い

さらに、自分を奮い立たせた。



それでも、できなかった。



押し寄せてくる絶望感。

さらに、過去の出来事が

僕を責め立ててくる。

もう、立ってられないよ。



そう思った時だった。

僕に手を差しのべて

くれている人が

うっすらと見えたんだ。



それは僕にとって、光りだった。



好きなことを

極められていない僕は

誰かに助けてもらえるなんて

考えたこともなかった。



でも、勇気を出して

声をかけてくれて

自分のことのように

心配してくれる人がいた。



それだけじゃない。

こんな僕を

「尊敬している」と

言ってくれた人もいた。



もしかしたら今までも

僕が鈍感なために

支えてくれていた人に

気づけていなったかもしれない。



優しい人がいたことに

確かに救われた。

僕のことを思ってくれている人

全員に感謝させて。



もう、怖くはならない。

だって、一人じゃないとわかったから。


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