七十五話「バカ正直」

どうしてあなたは

わざわざ言わなくて

いいことまで

言うの?



何度そんな言葉を

言われただろうか。

その言葉は、私にとって

まるで雨のようだった。



雨は嫌いだ。

無常に振り続け

私を一人ぼっちだと

思わせるから。



傘を持っていない

私は、ただ耐えて

唇を噛むことしか

できなかった。



どうしてって

それがわかれば

苦労しない。自分でも

それがわからないんだ。



私だって人の

怒ってる顔を

見るのは、好きじゃないし

できれば怒らせたくない。



自分が損をすることを

あえて言おうと思わないし

できれば楽な道だって

選びたいと思ってる。



私は単純に

自分の思いを口にしてるだけ。

でも、私がしゃべると

いつもいいことがないんだ。



正直なことがすべて

正しいことじゃない。

あなたが正直に言うことで

誰かが嫌な思いをすることもあるのよ。



ほら、また雨が

私の心を濡らしていく。

私の感情なんて

どうでもいいと言ってるかのようだ。



本当に自分のことが

嫌いになってくる。



でも、私だって

少しは強くなったんだ。



『バカ正直』と多くの

人に笑われても

私は決して笑う側の

人間にはならないと決めた。



もちろん、人が嫌な思いをしないかは

注意を払うようにする。

でも、私はやっぱり自分の気持ちに

正直でいたい。



今は笑われていても

いつか認められると信じてるから。

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