第114話 最後の謎

「ぐぬぬぬ。単に時間が巻き戻ったようにしか思えん」

「そ、そうですね。普通にさっきの続きって感じがします……」


 屋敷から連れ出されたロリババアとアンナちゃんが頭を抱えながらフラフラしている。


「どっちも間違ってないから、その認識でいいよ」


 ふたりにも事情を説明する代わりに仮想宇宙での出来事をイリスとの決着まで含めて記憶を与えてみたんだけど、楽でいいなこれ。


「邪魔者がいなくなったところで推理の続きだけど」

「む? 今は亡き賢者の仕業……で決着ではないのか?」

「実を言うと不完全なんだよ。あれは旦那がイリスを真実に到達させないための偽の推理。そいつに俺が便乗しただけだ」


 あれがなかったら俺はイリスの前で真相を話していただろう。

 あいつがどう動いていたかはわからないけど、予定通りにへ連れて行ってたら……まあ、ロクなことにならなかったのは確かだな。あるいはすべての決着を着けた後、安全に脱出できることを確信できたら正体を現わすことなく逃げたかもしれない。ディテクティブの旦那はイリスを野放しにするリスクを何としても防ぎたかったのだろう。

 これも完全に予想でしかないけど、俺の前で馬脚現したら、イリスには万に一つも勝ち目がないってわかってたんじゃないかな。

 

「屋敷に仕掛けられていたブービートラップ、でしたっけ? それが違うんですか?」


 アンナちゃんが目をぱちくりさせながら小首をかしげる。


「トラップ説も一見それっぽいんだけど、魔術トラップが仕掛けられているって証拠はないんだよ。形跡も含めてな。しかも、いくつか説明できなくなることがあるんだ。さっきはさり気なくスルーしてたけど、デブが死んだときどうやって従者まで同時に殺害し、行方不明にできたのかとか。もちろん偶然だった可能性も残るんだけどな。後はアンナちゃんの去り際にタイミングよく鍵の開いた部屋の扉。そういった目に見えない部分を意思決定能力を持たないホムンクルスが全部担当していましたっていうのは如何せん無理筋だ。共犯してたことを示す証拠もない」


 ティーネに実は自我がある、とかだったらわからんかったけどね。

 さっき鑑定眼で確かめた限りだと、紛れもなく魂のない人形だった。


「特にあの密室。ディテクティブの旦那の言うとおり鍵を開けたのが『真犯人』なら……アンナちゃんが部屋の前に来た時、リアルタイムで見ていたはずなんだ」

「ひっ……」


 アンナちゃんが身を竦める。


「いや……『真犯人』はこうしている今も俺たちを見ているんだよ」

「どこだ! いったいどこに!」


 慌てるなってロリババア。

 今からそいつを暴いてやろうってわけさ。


 もう量子眼による縛りはない。

 早速、鑑定眼を起動して、そいつを視る。

 ……ビンゴ、当たりだ。


「『真犯人』はお前だ」


 そいつに向かって人差し指を突きつける。


「えっ?」

「む? そっちには誰もおらんが」


 確かに誰もいない。

 そう、人間は。


「いるだろう? 一棟ほど、でっかいのが」

「な、何を言っておる? いや、まさか……」

「そのまさかさ」


 そこには俺たちが寝食を共にした忌まわしき賢者の屋敷があった。


「『真犯人』は……屋敷に霊体を同化させた賢者。いや、ちゃんと真名で呼んでやったほうがいいか」




「なあ? 『斎藤和樹』」




「これは……驚いたな。本当に驚いた」


 どこからともなく声が響いたかと思うと、屋敷から映写機のような光が伸びて、俺たちの眼前にひとりの青年が映し出された。

 黒髪黒瞳。紛れもなく日本人。

 驚いたと言っている割に、まったくの無表情だった。


「まさか、昔の名前で呼ばれる日がまた来るなんてね」

「屋敷で俺や旦那の郷土料理が出されたからな。つまり、賢者は『地球の現代知識』を持っている。だから賢者は転移者か転生者だろうとは思ってた」


 しかし、マジで屋敷自体が賢者だったとはな。

 俺がもし鑑定眼を使いながらここに来ていたら、いきなり真相がわかってしまうところだった。

 せっかくのミステリー舞台だったのに、いつもみたく台無しにしてしまうところだったぜ。危ない危ない。


「よもや賢者本人……なのか?」

「賢者様! やはり生きてらっしゃったのですね!」


 狼狽を隠せないロリババアと喜色を浮かべるアンナちゃんに、賢者こと斎藤は首を横に振る。


「いいや。残念ながら死んでいるよ。僕が賢者と呼ばれていた頃に使っていた肉体は滅びたんだ。それにしても、どうしてわかったんだい? 屋敷そのものが僕だと」

「さっき言ったとおりさ。罠だけで魔術師を殺害し続けるのには無理がある。罠を疑った魔術師に仕掛けを発見されればそれまでだからな。もし屋敷自体が術者本体なら、デブの従者を人目のつかないところ……例えば床下に用意された針穴の落とし穴に強制転移で落として密かに殺害することもできるし、アンナちゃんに遺体を発見させるために鍵を開けることもできる。極めつけは部屋が真空波の魔術で無傷だったことだな」

「あっ……!」


 アンナちゃんがはっとして口元を抑える。


「そっか……『術者対象外の原則』!」

「そうそう。この世界の魔術の仕様だ。何か理由がない限り『自傷』することはない。そうなんだろ?」


 屋敷自体が術者だというなら、部屋は臓器のようなもの。

 攻撃魔術で傷つかなかったのは至極当然ってわけだ。


「そうなれば事件にトリックなんて何もないのがわかるよな? 密室殺人だって『術者は部屋にいたけど、いなかった』んだ。デブはあの部屋でお前さんが『体内』に発動した真空波の魔術で殺されただけさ」


 量子眼の仮想宇宙で起きた連続殺人事件も実に単純だ。

 第二の事件は事前に殺害した従者の遺体をロビーに転移して浮遊の魔術で宙吊りにしただけだし。

 第三の地下の殺人はいわずもがな、脱出しようとしたふたりについては屋敷から分子分解魔術の光線を発射しただけ。


 おそらくディテクティブの旦那は返り血の謎に気づいた次点で、術者が人としての肉体を持たない可能性をきっちり想定していたと思う。

 ロリババアに「犯人が人間だった場合には」とわざわざ前置きしていたし、幽体化の話までしてたからな。


「じゃあ鍵は……」

「あれかい? 選定を始める合図に都合が良いと思ったからだね。深い意味なんて何もないよ。案内状についても内容はここにおびき寄せられるなら何でも良かった。僕の中に来てもらいさえすれば、あとは裁きを下すだけだからね」


 裁き、ね。


「何故だ、賢者よ。何故こんなことをした!?」

「何故、だって? そんなの決まってる。復讐さ」


 ロリババアの悲痛な叫びに、斎藤は淡々と答えた。

 その声からは、なんの感情も読み取れない。


「キミも地球人なんだろう? なら、わかってくれるんじゃないかな。突然異世界に転生させられて、賢者だなんだと持てはやされ。とことん利用された挙げ句、死後は遺産にたかられる。そんな生涯を送った男が何を考えるか」

「そうだな。わからんでもない」


 斎藤も現代知識と転生後の魔力ボーナスやチートでもって努力したのだろう。

 異世界で生き残ろうとするなら、なりふり構わず、自分の立場を勝ち取るしかない。

 しかし、どうやったところで持たざる者からは妬まれるし、出る杭は打たれる。その成果を横取りしようとする奴らも当然いるし、地位を脅かされた特権階級が敵に回るのも事実。

 召喚者の連中にとって俺たちは同じ人間じゃない。モンスターであり、使い魔だ。利用していいし、使い捨てにしていいし、気に入らなければ殺していい。

 イリスだって典型的な召喚者だ。あいつにとって旦那はゲームを楽しむための駒に過ぎなかった。


 そのあたりを理不尽と呪うか受け入れるかは、個々人に依るだろう。


「それに何より、あいつらは……ティーネを見殺しにした」

「ティーネ……あのホムンクルスか?」

「あの娘はホムンクルスなんかじゃない!」


 ロリババアの呟きに魔術ホログラムが初めて感情を見せた。


「なるほどね。それが一番の動機ってわけか」

「あいつらが大丈夫だというから預けたんだ。だけど魔王軍が城に攻めてきたとき、奴らはあの娘を見捨てて我先にと逃げ出した!」


 ふーむ。

 在りし日の想い人の似姿をホムンクルスとして再現した……ってわけか。そりゃ造形にも拘るわな。

 しかし、自分で造ったホムンクルスを生前のオリジナルと同一視してるとなると……。


「俺はさぁ……その場にいたわけでもないし、正直わからんけど。そいつら、賢者から預かってたVIPを盾にするような連中だったのか?」

「そうだったに決まっている! ああ、かわいそうなティーネ……」


 うん、これはやっぱり駄目かな。

 もし仮にオリジナルのティーネが自ら志願してしんがりを買って出たんだとしても、斎藤にとっては同じだろう。

 大事な人を殺されたって認識が変わることは決してない。


「よもや、そのようなことが……」

「賢者様、かわいそう……」


 ロリババアとアンナちゃんは賢者の話に同情しているようだが……。


「何を言ってる。お前たちも同じ穴のムジナだろう。僕から奪う気でいる汚い汚い魔術師の分際で。もう騙されないからな。お前たちも僕から遺産を……ティーネを奪おうというんだろう。だったらお前たちも死んで当然だ。一気に皆殺しになんてしてやらないぞ。ひとりずつ、遺産を探す浅ましさを見せた人間から順番に殺してやる」


 まあ、そうなるわな。

 おそらく魔術儀式で屋敷そのものに転生したのだろう。だが、視た感じ斎藤の霊体には妄執の思考ベクトルを修正するだけの魂エネルギーが残ってない。つまりはアンデッドだ。

 俺としては心情的に斎藤寄りだし、あんまりやりたくはないが……この手で終わらせてやるしかないか。


「まあまあ。メイドなら返してやるって。ほれ、封印解除っと」


 封印珠をひとつ放り投げる。

 地面に落ちると同時に、中からティーネが現れた。


「ああ、ティーネ……無事だったんだね」

「……ご主人さま」


 ホログラムを見たティーネの目が大きく見開かれた。


「さあ、屋敷にお入り。僕は少し忙しくなるから」


 よし、狙い通り。

 アイテムボックス内のアイテムは、同じくボックス内の封印珠に入れることができる。中に誰かが入っていれば装備させることも可能だ。

 ティーネにはアンデッドを即身仏にする強力な護符を持たせた。

 主人のプログラムに従ってティーネが霊体を宿す屋敷に戻れば、それでジ・エンドってわけだ。


 だが、あろうことかティーネはしばし考える素振りを見せたかと思うと。


「お帰りをお待ちしておりました、ご主人さま。どうぞこちらへ」


 屋敷ではなく、あらぬ方へと歩き出した。

 って、あっちは……。 


「ティーネ、どこへ行くんだ!」


 斎藤のホログラムが消えたと思いきや、屋敷から霊体が出現してティーネを追いかけ飛んでいく。


「むぅ? どこへ行こうというのだ?」

「屋敷はあっちじゃないですよね」


 うーん、イリスのこともあったしロリババアだけに見せようと思ってたけど、しょうがないか。

 ふたりに解呪魔法を発動っと。


「むむ……なん、だと……?」

「うわっ。あんな塔、さっきまでどこにもなかったですよ!」


 ティーネと亡霊が向かった先。

 そこには、こじんまりとした石造りの塔があった。


「ふたりにかかってた認識阻害の魔術を解呪したんだよ。そんなのは人払いとしちゃ普通だし、俺も最初はスルーしてたんだけどな……」


 この森に初めて入ったとき、大きな屋敷と魔術師の塔が目に入った。

 魔術師であれば当然、工房のある塔に興味惹かれるはず。

 なのに俗物丸出しのロリババアはともかく、イケメン魔術師までもが塔に一瞥もくれることなく、まっすぐ屋敷を目指した。


 その光景を目の当たりにして違和感を覚えていたのだが、なんのことはない。

 ふたりには認識阻害の魔術がかかっており、塔が見えていなかったのだ。


 無理矢理セキュリティを突破したせいで、俺だけが最初から真実の光景を見ていたってわけだ。

 量子眼の仮想宇宙では認識阻害の魔術をレジストできなかったおかげで、皮肉にも塔が隠されていたと気づくことができた。


「屋敷が魔術師を誘い込むためのダミーなんだから当然、賢者の本当の住処は別にあったってことになる。つまり、あれが本当の賢者の工房だ」




 俺たちが追いつくと、ティーネが塔の前で霊体の斎藤に頭を下げていた。


「改めましておかえりなさいませ、ご主人さま」

「あ、ああ」


 ティーネはいつもどおりの無表情だったが、逆に斎藤は戸惑っているように見える。


「そして皆様、既に塔が見えていらっしゃいますね? おめでとうございます。こちらが賢者様の遺産です」


 ティーネが手を掲げて、まるでバスガイドのように丁寧に塔を紹介した。


「こちらの中には研究施設はもちろんのこと、生前の賢者様が残したすべての手記や書物が残されております。管理はわたくしが責任を持って日頃から完璧にこなしておりますので、保存状態も――」

「何を言ってるんだティーネ!!」


 斎藤がティーネの解説を遮った。


「こいつらは僕の遺産を狙ってやってきた略奪者なんだぞ。それを……!」

「お言葉ですが、ご主人さま。わたくしが生前のご主人さまから仰せつかっているのは塔の管理と、候補者の皆様への手紙の代筆。そして選定を滞りなく行なうためにあらゆるもてなしをすることが、わたくしの使命です」


 淡々と語るティーネに対し、霊体の斎藤はあきらかに目を泳がせていた。


「あー、そいつは別にバグってないと思うぞ」


 いらんことかもしれないが、一応言っておこう。


「アンタはティーネに候補者の殺害を命じたりはしてなかったんだろ? 事実、共犯者ではなかったし、屋敷内での殺人は全部アンタがやった。だから、その子はアンタが用意した建前を忠実に守ってるだけなんだろうぜ」

「僕は本当に遺産を与えていいなんて、命じていないはずだ!」

「そうなのかい? じゃあ、本人に聞いてみようぜ。なんで俺たちは遺産の継承をできることになったんだ?」


 おどける俺にティーネは丁寧に一礼してから口を開いた。


「確かに具体的な継承の条件は設定されておりませんが、皆様は賢者様が用意した試練をくぐり抜け、認識阻害の魔術を打ち破り、塔を発見いたしました。よって案内状に書かせていただいた通り、ご主人さまの遺産を受け継ぐに『最も相応しい方々』であると判断いたしました」


 なるほどな……案内状が賢者の代筆なら、そのままティーネに対する命令書になるとも解釈できなくはない。


 今思えば、ティーネの言葉には何一つ裏がなかった。

 こちらの下衆の勘繰りをのらりくらりと躱すような無感情な回答も、屋敷の中で起きた事件への反応や謝罪も、回答権限がないから黙秘したのも。

 彼女は本当に何も知らされていなかったのだ。

 賢者の裏の意図を解さぬまま、言われたとおりに選定を実行に移していただけ。


 だけど、なんだろう。

 今のティーネは少し違う気がする。

 明らかに反抗しているように見えるのだが……。


「馬鹿な。そんな馬鹿な! 僕は認めていないぞ!」

「ご主人さま」


 尚も食い下がろうとする斎藤の霊体を、ティーネの華奢な腕が優しく包み込んだ。


「もう、お休みになられてください。お疲れ様でした」

「ああ、ティーネ、僕は――」


 その瞬間、斎藤の霊体は光の中に消え去った。

 もちろん俺がティーネに装備させていた対アンデッドの護符が効果を発揮したに過ぎないわけだが……。


 ロリババアが呟く。


「本当にホムンクルス……なのか? 彼女は」

「ああ。そのはずだけどな」


 そう返す俺も、自信がなくなりつつある。

 何故なら、ティーネが笑っていたからだ。

 それは微笑みと呼ぶには迷いを覚える、本当に曖昧な笑み。

 まるで亡き主を慈しんでいるようにも、悼んでいるようにも見えるような。


「賢者様……」


 アンナちゃんが光の残滓を追うように天を仰ぐ。


 ――こうして。

 賢者と呼ばれた一人の転生者の妄執が引き起こした事件に、幕が降ろされたのだった。





「それでそれで? どうなったの!?」


 所変わって、魔王退治の途中で寄った街にある冒険者酒場。

 イツナがテーブルに身を乗り出して、続きを催促してきた。


「どうなったって……それで事件は終わりさ。見送りはできなかったけどアンナちゃんは賢者が死んでいたって報告するために国へ帰ったはずだし。生き残った連中もちゃんと解放したぞ。ロリババアも、賢者の遺産を継承して願いを叶えた。それで誓約達成ってわけさ」

「えーっ! ティーネさんがどうなったのか、すっごく気になるのに!」

「どうなんだろうな。ロリババアと一緒にいるんじゃないの?」


 そこから先は見てないし知らんって。


「っていうか、英国ダンディさんって絶対あの人でしょ!? 超有名な探偵さん! わたしですら知ってるよ!」

「わたしですらって……別に自分でディスらなくったっていいんだぞ」


 よしよしとなでてやると、嬉しそうにくぅーんと鳴くイツナ。

 犬化を通り越してもはや犬である。


「でもそっかー、わかんないんだー。残念」


 面白い異世界の話をせがまれたので語り聞かせていたのだが、どうやらイツナ的には不完全燃焼だったようだ。


「一応、ロリババアが遺産を受け継ぐって決意したからな。ただまあ、野心とか栄誉のためっていうよりは、あの場所を守っていくつもりだって言ってったし、そもそもあそこを一人で管理できるわけないからな。ティーネもそう悪いことにはならんと思うぜ」

「そうだよね? よかった!」


 イツナが満面の笑みを浮かべたので、よしとしよう。


 しっかしティーネか……今の今まで忘れていたけど、あのときの行動は確かに謎だったなー。

 アイテムボックスに入れる前に鑑定眼で確かめた時、ティーネに魂はなかったはず。

 だけど、あのときのティーネはあきらかに主人の斎藤に逆らっていたし、自分が触れれば斎藤を成仏させられるってわかってたようにも見えたんだよな……。


 プログラムに沿った、ただの偶然なのか。

 それとも主人の姿を見た瞬間、自我でも芽生えたのか。

 まさかとは思うが、あるいは……。


「あらゆる不可能を除外して残ったものが如何に奇妙であろうとも、それが真実……か」


 旦那が言っていたフレーズを思い出した。

 そういえば、これも結構有名なセリフだった気がする。


 そこに。


「失礼します。もしかして、トーリス・ガリノイ様でしょうか?」

「ハァッ!? どうしてその名を知って……って!」


 ……そういえば、他にもちゃんと面白いオチのつく異世界はいくらでもあったのに、俺はどうしてこんな陰惨な話を選んだのだろうか?

 ひょっとしたら、俺の巡る異世界に偶然なんてものはないのかもしれない。

 何故なら、俺の目の前では陶磁のように綺麗な肌の少女が……まるで再会を喜んでいるかのように微笑んでいたのだから。







 閑話休題それはともかく


 最後の謎だ。

 俺は、彼女に偽名をフルネームで名乗っていなかった。

 イケメン魔術師に呼ばれた仮想宇宙でならともかく、現実の方で彼女が知る機会などなかったはずである。

 それは、つまり……知ってる誰かが教えたってことだ。

 犯人はひとりしかいない。


 どうやら久しぶりに拷問棒の出番みたいだな!

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