第4話 おたんじょうびの うた

あさが きて いちばんに ぼくは ゆうべの ことばを かみに かきつけた。そうして それを ユーリに みせた。ユーリは ふっと わらって「モラらしい」と いってくれた。それから ふたりで きょうの おたんじょうびいわいのことを うちあわせた。



よるになる ちょっとまえから のりくみいんしつは ざわざわしてた。テーブルを つくって みんなで タルに こしかけた。


でも すわっていたのは おかしらが とっておきの ラムしゅを もってくるまでの ほんの みじかい あいだで みんなは あっというまに うたったり おどったり あっちにいったり こっちにきたり。

オーガストが やっと のりくみいんしつに あらわれると とたんに みんなは オーグをかこんで ますます おおさわぎになった。



テルモが ごちそうを もってくると えんかいは さらに もりあがった。


みんなで かぞえながら そらにむかって 26ぱつ ピストルを うった。


ミルが えを てわたすと オーガストは ミルのあたまを くしゃくしゃ なんども なんども なでまわした。



みんなの おなかも すっかりふくらんで おさけも いっぱいのんで タルや ゆかに すわりこむひとが おおくなったころ ユーリが バイオリンを とりだした。みんなは はくしゅで それを むかえると しゃべるのを やめて バイオリンの げんが なるのを まった。


ユーリは バイオリンを かたに かけると けれど まだ ならさずに ゆっくりと ぼくを みた。


「モラ」


よばれて ぼくも あわてて ユーリの となりに たった。

みんな みてる。

オーガストも みてる。

すごく どきどき する。


ぼくは てのひらを ぎゅうって にぎりしめると ユーリに むかって うなずいた。


ユーリが ゆみを げんにあてて すらり うでをひくと とうめいな おとが せんしつに ながれた。ぼくは ごくんと いきをのんでから ゆうきをだして うたいだした。




  せかいに きみが いてくれて

  ぼくは とても しあわせ

  うまれてくれて ありがとう




ぼくの うたは たった これだけ。

これで ぜんぶ。

これが ぼくの オーグへの ぜんぶ。



むねが ばくばく どうしよう ぼく へんじゃ なかったかな。えんそうが おわってからも ぼくは そのばに つったったまま いっぽも うごけなかった。


おそるおそる かおを あげたら オーガストと めがあった。とたんに かおが ものすごく あつくなって ぼくは また うつむいた。


オーガストが たちあがる。くつおとが ちかづく。ぼくは ぎゅうっと めをとじて ズボンを にぎりしめた。


「モラ、」


よばれて そおっと めをあけた。すぐ そばに オーガストの やさしい かおがあって ぼくは いきが とまりそうになった。


「ありがとな、モラ」


そういって オーガストは ぼくの おでこに キスをした。


みんなの はくしゅと くちぶえと。おろおろして となりをみたら ユーリも わらって はくしゅを してた。

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