第4話。遺跡攻略
「私って遺跡に入るのは初めてだけど、こんな場所なのね」
災厄と静紅は森の下に森があるという不思議なこの遺跡にいた
空のようなものも見えて見渡す限りは森であった。通路のようなものはない
完全に外と同じ雰囲気。しかし災厄は雰囲気が違うことに少し気になったが気にせずに先に進む
「まっ…待って~」
いそいそと災厄を追う静紅
カチ、と何かのスイッチが入る音
「あ…」
もはや何のスイッチかなど言う必要はないだろう
《炎舞》
草で隠れていたスイッチを静紅が踏むと同時に上空から隕石が降ってきた
大きさは10メートル程
災厄はスイッチを踏んだ瞬間に魔法を発動しており、赤い炎の球体を形成
大きさは隕石の大きさの半分程度だが問題なく相殺する
「あらあら…」
「お前…殺す…か?」
初っぱなから罠にかかるという足手まといっぷり
災厄は軽く殺気を放つ
「わ…わざとじゃないのよ!!?」
殺気を向けられ慌てながら静紅は災厄のもとに近付き、
カチ、と再びスイッチを踏んだ
『…』
責めるような災厄の眼
地面から二つの巨大な土の手が現れて二人を潰そうと襲い掛かる
《完全領域》
静紅は魔法を発動。自身と静紅を包むように防御壁を展開
防御壁に突撃した土の手は逆に粉砕された
「…ごめんなさい」
「…っ」
災厄は軽い舌打ちをする
「座れ…」
静かな圧力
お姉さんとして駄目だが、今は何も言えない
「はい…」
「お前遺跡初めてだ…だから説明する」
災厄としても無駄に魔力を使うのは面倒である
静紅との会話で成長した言語力を駆使する
「遺跡…Sランクは三層ある。一層、造ったやつの罠今いる…二層、変質した生き物や自然物…三層、ゴーレム…罠があるのはここだけ…」
一層目はこの遺跡を造った者の趣味趣向による罠、造った者が強力な魔法使いであればあるほど罠も強力になる
二層目は遺跡に眠る宝の魔力を浴びて存在が変質した生き物や自然物がいる。奥に眠る宝が貴重なものであればあるほど強力な何かに変質する
三層目はAとSの境目と言われる層、造った者の分身ともいえるゴーレム
Sランクに位置する遺跡の作製者は全員が強力な魔法使い、楽には勝てない。災厄も過去に1回だけSランクを攻略したことがあるが、半死半生で何とか攻略した、その代償は両腕を切り裂かれて吹き飛ばされた
無理矢理口と足で切り飛ばされた腕をくっつけたら、きちんと治ったが、災厄としては三層目までは無駄に魔力を使用する気はない
「…わかった…か?」
「わかったわ!!」
名誉挽回と意気込んで立ち上がる静紅
カチ、
もはや汚名挽回であった
「…」
舌の根が乾かぬうちにである
「…わかった…」
何か諦めた災厄は溜息を吐きそのまま静紅の襟首を掴む
「ん?」
大木から手と足が生えて災厄と静紅に襲い掛かる
「…死ね」
その大木へと静紅を投げつける
「ふぇぇぇ!?」
《完全領域》
投げられながら魔法を発動
勢いと固さで大木を真っ二つに粉砕する
「ななな…なにを」
静紅は魔法を解除して空中で態勢を立て直す。その瞬間に災厄は再び静紅の襟首を掴む
そして再び投げる
静紅が好きに移動するから面倒なのだと悟った災厄は静紅を投げて運ぶ
空中にも罠はあるが災厄が投げた軌道には一つも罠がない
簡単便利の運搬方法だ
もっとも静紅でなければ投げた瞬間に首がもげる危険な方法である
災厄としても一層目はつまらないため次へと進みたいと考えていた
森の中で通路もないため目指す場所がわからないというこの遺跡の一層目の最大の罠
「あ~なんか慣れるとこれ楽ね」
どこからか取り出したお茶を飲みながら運搬されている静紅
災厄は迷いなく進む
この遺跡を発見した時のように魔力の通気孔を探しあてていた
そこへと進むだけである
「はぁ~楽チンね~」
慣れた静紅は力を抜いて、お茶を飲みどこからか取り出した煎餅を食べ、なすがままに投げられる
「死ね…」
釈然としない災厄はそのまま受け止めずに放置
当然ながら重力はあり、音速のまま落下する
「へび!!」
力を抜いていた静紅はそのまま地面に落ちた
「ふぶ!!?」
ワンバウンド
地面が拉げ、勢いがのった衝撃が半径100m程度を吹き飛ばす
「ひべ!?」
ツーバウンド
無傷の静紅は浮き上がり、半径50m程度を吹き飛ばす
「はぼ!!」
スリーバウンドで勢いが止まる
30m程痕が残ったが御愛嬌
「…うぅ…」
生きていることを確認して災厄は舌打ちをする
プルプルと落下の衝撃で震えている静紅を無視して災厄は下へと続く穴へと落ちながら小石を虚空へと投げる
第一層目攻略
カチ
災厄が投げた小石はスイッチを見事に当てて罠を発動させる
残ったのは静紅のみで、つまり静紅に向けて罠が発動
「ひぃやゃぁあ!!??」
空気が変質し、四方から鎌鼬が襲い掛かった
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
第二層目
一層目と同じように空のようなものが見えて植物でできたドラゴンが多数飛翔している
植物で囲まれていた空間だと予想できるが、植物は一つも見当たらない不毛な大地であった。全ての植物がドラゴンに変質したのである
通常はここまで変質するものではなく、巨大コウモリや人を襲う樹木や人を食らう吸血植物程度である
仮に大盗賊団がこの遺跡を攻略しようとも、一層目で壊滅していたであろう
何かの奇跡で2層目に辿り着いても、ドラゴン1匹に苦戦していた。
災厄が攻略したSランクより明らかに難易度が変わってる
この奥に眠る宝は今までと別格だ。その事実を受け入れ
「…あはははは!!」
災厄は笑い
空のようなものを飛ぶドラゴンに突撃した
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
「うぅ…ひどい目にあったわ…」
あの後も鎌鼬を避けてスイッチ
その後の罠も避けてスイッチ
そんなこんなで五回ほど罠&スイッチを繰り返して10分後にようやく第二層に降り立った静紅
「…あら…もう終わったの?」
その頃には翼がもぎ取られたドラゴンの腹を災厄が引き裂いていた
最後の一匹
数十はいたドラゴンは腹を引き裂かれて全滅していた
ニタリと狂喜の笑みを浮かべた災厄。それを見た静紅の感想は楽できて良かったわーである
「さて…次が最後かしら」
第二層目は静紅が入った瞬間に攻略
根も残されていなかった
「…」
災厄は再び平常状態に戻り、頷いた
穴は見えるところにあり、すぐに降りることができる
「疲れてない?」
罠に散々嵌りながらも無傷で魔力消費が無い静紅
「別に」
災厄も特に魔法を使っていないので、魔力消費は無い
準備はできているので、災厄が頷いて三層目は二人で降り立つ
そこは50メートル四方の石でできた部屋があった
今までとは別の意味で雰囲気が違い、遺跡のようなイメージである
「…なんか普通ね」
拍子抜けという感じの感想を洩らす静紅
「…宝はそこだ」
部屋の奥に扉があった
第三層であることは間違いなく、そこが目的地である
災厄が指差すと同時
『!!?』
災厄と静紅に圧力が襲い掛かる
今まで感じたことのない圧力、通常の盗賊団が相手にならない災厄や静紅が純粋な恐怖を覚える圧力
「ようこそ…少年少女、私はここの作製者でありゴーレムだ…」
長身の男が部屋の中央にいきなり出現した
圧力が更に強くなる
男は若い風貌ですらりとした長身に外套を羽織っている
見かけはただの優男
しかし外見で姿を判断するのは間違いである。災厄と静紅も外見で判断してはならない者である
「待ち遠しかったぞ…私を完全に殺してくれる少年と少女よ」
圧力が更に増し、汗も出ない身体である災厄と静紅に悪寒が生じ、爽やかな笑顔を向ける男
『…』
災厄と静紅は一歩引いた
一歩引いてしまった
正真正銘の戦いの意識をもっている時に、純粋な恐怖を感じて引いてしまった
「さぁ殺し合おう、反則級の少年と少女よ…私はアギト…生前は絶対強者級であった、相手にとって不足は無いだろう?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます