第64話 元勇者、いざ地下の部屋へ

 俺が剣をふるうと、そのまま男の体は吹き飛びその先にある木に叩きつけられる。

 そのまま倒れこみ、腰を抜かしたまま動かない。


「さあ、どうしてここにいるのか、全部吐いてもらいましょうか」


 ルシフェルが男に近づきギッとにらみつける。

 さすが魔王、迫力が違う。男が全身を震わせ、怯え切っているのがわかる。


「ひ、秘密なんて何も知らないぞ。逃がしてくれ」


 さすがに簡単には教えてくれないか。するとルシフェルが1歩前に出て男の足元へ。


「あんたがあの魔獣を呼び寄せていたのね」


「ひぃぃ~~何のことでしょう」


「あんたみたいな姑息で利益のためなら何でもする小悪党なんて、吐いて捨てるほど見てきたわ」


 怖い顔になり指を拳でポキポキと鳴らす。そして男の胸ぐらをつかみ起き上がらせると──。


 ドン!!


 ドンと胸を突き飛ばす。男は身の危険を感じたのか股間部分を抑える。

 そして俺はそのとっさに出た行動を見逃さなかった。


「なるほどね、その部分に重要なものがあるということね」


 ルシフェルの言葉に男ははっとして股間から手を放す。しかしもう遅いんだよ。


「人間っていうのはね、あらかじめ決めたことには演技ができても。とっさの行動だとどうしても素が出てしまうものさ」


「こいつの所持物を調べましょう」


 そしてルシフェルの言う通り俺たちはこいつの服をはいでいく。


 こいつ、パンツの中に隠しものをていた。

 さすがはルシフェル、こういう卑怯で自己保身第一人間の扱い方には慣れている。


 するとルシフェルは顔を赤面させる。


「じゃあ陽君、こいつのパンツから隠しものをとって」


 えっ、俺がやるの? 今までルシフェルが先導していたんだから──。


「わたしがやるの? 察してよ、あなたがやってよ」


「そうだよな。女の子にこれはきついよな」


 仕方なしに俺はこいつの服を脱がす。


 服はローザとセフィラに渡す。何か手掛かりがあるかもしれないからな。

 そしてこいつはあとはパンツだけ。


 怯えるこの男を無視して近づく。


 俺は勇気を出してこいつのパンツに手を出す。そして──。


「あった」


 1枚のメモ書きを発見。あまり手に触れないようにそっと中身を空ける。

 地下3階と書かれた文字に地図。とある扉に×のしるしがある。おそらくそこに何かがあるのだろう。

 俺の世界でも、パソコンとかのパスワードをメモに書いている人を見かけるが、それと同じ類だな。ゆっくり調べさせてもらおう。


 さらにこいつの服を調べていたローザが重要な手掛かりを見つける。

 このバッジ、見たことがない。するとそれをじっと見たローザが驚いて叫ぶ。


「これ、私知ってる。政治を行う役人がつけているバッジです」


「以前、政治パーティーで見たことがあります。間違いないです」


 ありがとう、さすが政治にかかわっていただけはあるな。助かる。


「つまりこいつは裏切り者で、政府関係者でありながら魔王軍に味方していたと」


 驚愕の真実だな。俺が冒険していた中でもあったが。


「国が国なら死刑判決だってありあるわ」


「そうだなルシフェル」


 全くだ、魔王軍への裏切りなんてどこの国でも重罪だ。

 とりあえずいい材料になった。これで城の内部を操作する理由ができた。



 そしてこいつを縄で縛りつけてセフィラに連行。俺とルシフェル、ローザは魔王軍の残党の片づけに入る。ほかの冒険者たちがよく戦ってくれたらしくもう少しで終わりそうだという状況。


 片付くのに時間はかからなかった。


 そして仕事は完了、この男の事情を話し、兵士に渡す。





 そしてその夜、俺たちの本番はこれからだ。

 人目の少ないところから秘密裏に城壁から城に侵入。誰にも気づかれないように中に入る。長年侵略戦争や魔王軍との戦いが少ないこの街、そこまで警備は厚くない。


 窓から城の中に入る。


 そして地図の通りに階段を降り、地下3階へ。

 特に問題もなくたどり着く。


「ここみたいね」


 ルシフェルが指差す、印があった場所。そこはただの壁、上には時計があるだけ。


「何もないです……」


「そのようですね──」


 ローザとルシフェルが互いに目を合わせ、肩を落とす。けど俺とルシフェルはわかる、この意味が──。

 確か魔王軍のアジトを探すとき、以前仕掛けであった。


「あの時計、肩車すれば届くよな」


「私が上に乗るわ、いい?」


 俺がそれを聞いて座り込むとルシフェルは俺の肩の前に移動。俺は肩の前にある両足を持ち上げ立ち上がり、肩車をした格好になる。

 そしてルシフェルが時計の針をぐるぐると回し始める。


 時計が12時になった瞬間に俺が扉を押すと。



 グルッ──!


 何と扉が回転しはじめたのだ。その光景にセフィラとローザが驚いて顔を失う。

 ルシフェルが俺の肩から飛び降りると、俺は彼女と目を合わせる。


「私が部下たちに教えたやり方だもの。すぐにわかったわ」


「俺もだ。既視感があったぜ」


 道の先を進む。

 明かりが全くない真っ暗な狭い道、俺が先頭になって足音を立てずにゆっくりと進む。

 そしてしばらく歩くと。


「ここ、広いです。何かあるみたい」


「そうですね、調べてみましょう」


 セフィラが言葉を発した瞬間──。


 パッ!!


 電気がついたように突然明るくなる。

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