第45話 ワイバーン狩りへ


 依頼を受けるとなって、警察署へと向かい、依頼を受領するとの申請書類を提出すると、早速該当の島との無線連絡が行われて……依頼を受けるのが俺達で良いのかの確認と、現代の状況と詳細についての確認が行われる。


 俺達が現地に向かっている間に他の連中が依頼をこなしてしまって無駄骨になりました、なんてのは全く笑えない話なので、そこら辺の確認もしっかりしてもらって……どうやらまだ誰も依頼を受けていないようだ。


 これだけ条件が良いのなら、我先にと受ける連中がいるはずなのだが……今は忙しいのか、それともはっきりとしない数の多さを警戒しているのだろうか?


 何はともあれ、ライバルがいないのであればありがたい。

 正式に契約を結んで、何枚かの書類を書いてから警察署を後にし……早速準備に取り掛かる。


 飛行艇を預けている整備工場に連絡し、飛行服と飛行帽の準備をし、積んでいく荷物を買い込んで……それらが終わったら皆で俺達の家に再集合しての作戦会議だ。


 4機の飛行艇でチームを組んで戦う以上はしっかりと編隊だとか陣形だとか、動きの方を確認しておく必要がある。


 出来たばかりのチームじゃぁまともな連携は出来ないだろうが、それでもしっかりと話し合い、可能な範囲でやっていく必要があるだろう。


 この会議で一番役に立ったのは、現役の軍人であり数十回の編隊飛行経験があるクレオだった。


「先頭はラゴスさん、中央にアンドレアさんとジーノさん、後尾に自分という形を取りましょう。

 自分はこう見えて飛行艇に関しての知識はそれなりに持っているほうでして……ラゴスさんの飛行艇の性能を10とするなら、自分の飛行艇は6、アンドレアさんとジーノさんの飛行艇は……整備状況なども考慮して3という感じになります。

 で、これだけ性能差がある飛行艇で無理に編隊を組んでもしょうがないので……ラゴスさん達が突っ込んでワイバーンを蹴散らす。蹴散らした後にアンドレアさん達が援護に入る。自分は最後尾で戦場を俯瞰しながら臨機応変に動く、が一番だと思うんです」


 その意見に俺もアンドレアもジーノも異論は無かった。

 俺達の飛行艇に性能差があるのは、ガルグイユとの実戦の中で痛感している。


 クレオが見立てた性能の数字も、実感としてそのくらいなのだろうと納得が出来る。


「幸いラゴスさんもアンドレアさんもジーノさんもワイバーンとの戦闘経験はある訳ですし、油断さえしなければ数が多いとはいえ、問題なく勝てる相手でしょう。

 本土でずっとお守役をしていた自分はドラゴンどころかワイバーンとも戦闘したことがないので、最初のうちは後方から皆さんの戦い方を見させて頂いて勉強することにします。

 腕にはそこそこの自信があるので、ワイバーン達の動きをある程度把握出来れば問題なく動けるはずだと、自負しています!」


 これにも全く異論は無かった。


 俺は初戦闘でワイバーン2匹を落としているし、アンドレアとジーノはその長いキャリアの中で数十匹のワイバーンを落としてきている。

 油断さえしなければ……お互いの邪魔をすることなく、それぞれが自分の戦いをしっかりと出来ていれば問題なく勝てるはずだ。


「ちなみに現地の島には、バレットジャックがこれから回遊してくるそうで……さっさと依頼をこなせば、タイミングさえ合えば、またバレットジャックをいただけちゃいますね!」


「良し、そこまでだ。作戦会議に食欲を持ち込むな」


 と、俺のそんな言葉でクレオを黙らせて作戦会議は終了となった訳だが……なんだろうなぁ、バレットジャックの話を聞いてからアリスとアンドレアとジーノが異様にやる気を出しているんだよなぁ。


 士気高揚が狙いだったのならあの無駄話も、無駄ではなかった……ということなのだろうか?



 ともあれそうやって準備を整えた俺達は翌日、早朝。


 飛行服を着込み飛行帽を被り、積荷を鞄に詰め込んで、飛行艇に乗り込み……我らが拠点であるナターレ島を飛び立ち、依頼主が住まうケスタ島へと針路を取る。


 方角は南、片道一時間の飛行となる予定で……俺達の飛行艇は先行して島へと向かう。


 アンドレアとジーノの飛行艇に合わせた速度で飛んでも良いのだが……重い機体でダラダラ飛ぶというのは、燃費的にもフラストレーションが溜まるという意味でもあまり良いことではない。


 先にケスタ島へと向かい、依頼主に話を聞いて、目標の島の位置をしっかりと把握するなどの準備を整えているようが良いだろうとの判断だ。


 ケスタ島はここらの島の中でもかなりの大きさを誇る島なんだそうで……広い平地がある関係から農業や牧畜が盛んなんだそうだ。

 そこら辺が盛んということは、当然飯も美味い訳で……仮にバレットジャックが回遊してこなくても、美味い飯にありつくことは出来るだろう。


 ……なんだか俺も上手くクレオに乗せられてしまっているなと、そんなことを考えながら飛行艇を操縦していって……そうしてケスタ島を視界に捉えた俺は、顔をしかめながら慌ててスコープを覗き込む。


「……アリス! ケスタ島がワイバーン共に襲撃されている!

 数は3……アンドレア達を待っている余裕は無さそうだ!」


『了解!

 3匹ならなんとかなりそうだし、依頼主さんに何かあったらそもそも依頼の意味がなくなっちゃうからね! 

 さくっとやっちゃおう!』


 スコープを覗き込みながら俺が声を上げると、アリスがそう声を返してくれて……そうして操縦桿をしっかりと握り込んだ俺は、スコープを覗き込んだままマナエンジンの回転を上げていって……目標のうちの一匹をスコープの中央に捉えるのだった。


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