第54話

 坂井先生と付き合うことになった。


付き合って良かったのか。


というか、私でいいのだろうか。


仕事の為に付き合ったことはある。


利益があるから。


でも、今回は利益なんてない。


仕事に関係ないし。


それなのに、付き合ってしまった。


初めてのことだから、不安でしょうがない。


しかも、坂井先生にいじめのこととか、話してしまった。


やってしまった。


絶対嫌われる。


いじめられていた人と付き合うなんて、嫌なんだろうな。


坂井先生の何かしらの企み?


とりあえず、あまり深入りしないで様子を見よう。


いじめられたときから、人のことを信用できなくなって、家族にも1番辛いことは言えなくなった。


家族には迷惑かけたくなくて、心配させたくないからだ。


あと、プライドもあるのかもしれない。


家族の前では少々辛い話をして愚痴る。


本気で悩んでいるものは、言えない。


楽しい話嬉しい話はたくさんする。


喜ばせたいからだ。


わたしが長女だからだろうか。


坂井先生には、なぜかいじめのことを話してしまった。


今になって後悔。


家族にも言えなかったことなのに。


もう何十年も前だから、言えばいいのにって、思う人もいるかもしれないけど、当事者からしたら、そんな簡単なことではないのだ。


死ぬことを考えたくらいだからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る