魔王転生
◇◇コウの目線です◇◇
『ブホン』の攻略に魔人が参戦して来る?!
(オキナにこの事を知らせなきゃ)
メモを取り出して、通信石に翳し読み取らせたその時だ。バン、バァンッと弾ける音。飛行船の外が、騒ぎになっていた。
騒ぎと言えば、アイツだ。コウヤのやたらに響く声が聞こえた。
「てめぇを、始末するだけだッ」
◇◇コウヤ目線◇◇
一人で無茶をした挙句、キックバックで足にも腕にも力が入らない。周りは獣人だらけで、おまけに俺を仕留めようとライガが目をギラギラさせてやがる。
『コウヤ。おまえの体を
悪くはあるまい?! ククククッ』
ゾッとする様な低い声。魔王オモダルの声が頭の中で響いてる。
悪くないーーー。ただし、カノン・ボリバルを討ち果たすまでだ。どうせこのままでは、俺は倒れ込み獣人にハリネズミの様に槍を突き立てられ終わる。
アイツを倒す前に、倒れるのは嫌だ。あの世でコウに『仇は取った』と伝えてやりたい。
「悪くないなーーー。ただし、五分だけだ」
『ほぅ? ずいぶん都合の良い事を言う。我を舐めているのか?』
「その前に力を示せっての。このままでは俺は死ぬんだろう? ならこの死地を脱するのが先だろ」
『良かろう。見ておれ』
そう言うと魔王オモダル(の意識)は、何やら詠唱を始めた。「$€#%€&……」
地の底から魔素が集まってくる。
巨大な力がマグマの様に吹き出してきた。背中に突き刺さっていた手槍が体の内から溢れる力で、押し出される様に抜けた。
禍々しい闇があたりを包み込んで行く。月明かりに照らされた飛行場は、漆黒の闇に閉ざされた。
「な、なんだ?! この力は? 何が起こっている?」
カノン・ボリバルの顔が歪んだ。
巨大な魔力が俺を包み込み、さらにその力を増している。魔力が竜巻の様に渦巻き、バチバチッと火花を散らした。
「し、遮断……」
カノン・ボリバルが手をかざし、遮断の壁で包もうとするが壁は魔力の竜巻に飲まれ粉々に砕け飛んだ。
「チィッ、力を使いすぎた。壁が薄くなっている。ライガッ、援護するからコウヤの後ろへ回りこめっ!」
カノン・ボリバルが剣を抜き、ライガに指示を飛ばす。
「フムッ、だが断るッ」
「「「はぁぁぁぁぁぁ?!」」」
獣人達は口をアングリと開け、ライガを見た。
「コウヤは俺の獲物よッ、更に強くなったヤツを叩きのめしてこそ最強。皆、見ていろ。我が最強の秘剣ーーーだッ!」
「馬鹿者ッ! あの魔力の氾濫を何と見るッ、貴様の剛力だけでは叶わないッ!
「フンッ、俺たちはまだ真の力を見せてないだろう?」
そう言うと拳を両脇に当てて大きく息を吸い込み、やがて風船の様に膨らんだその息を、一気に吐き出して咆哮した。
「グォォォォッ」耳をつん裂く大咆哮だ。
見る見る体の筋肉が盛り上がり、黒く変色して行く。メキメキと音を立てて膨れ上がり、実際の身の丈は変わらないはずだが倍近く大きくなった様に感じる。
「フゥゥッ、我が秘剣ーーーを披露せねばなるまいっ」
ライガはその何物も噛み砕く強靭な顎を怒らせ、真っ白な犬歯を見せてニヤッと笑った。
スラリと剣を抜くと、グッと腰を落とす。
剣先を正眼に構え体全体を軽くユラユラ揺らし、俺を見据えた。
「行くぞ」
その巨体に似合わない柔らかな動きから、閃光の様に突っ込んで来た。バチーンッと壁に当たった様にシールドに弾き返される。
「ヌァッ、ハッハッアッ! 硬いのぉっ、硬いッ。岩にぶつかったようじゃあっ」
笑いながら、ブンッと剣を振るうとまた腰を落とした。
『何じゃ? このバカは?』
魔王オモダルの声が頭の中に響く。
『だからその馬鹿なんだよ。だが、厄介な馬鹿者なんだがな』力が戻って来た俺は、腰を落としながら教えてやった。
『お主も馬鹿者には変わるまい。自ら死地に入り込みよった』
「ちげぇねぇ。悪いがもういいぜ。力が戻った」
『何を言っておる? 気がついていないのか? 既にお前は我と入れ替わっておると言うに』
「?!ッ」
『お前こそもう良いぞ。獣人を我の復活の生贄とする。お前は隅で見ておるが良い』
言われて気がついた。目の前の光景がよそよそしい。俺の見たい方向を見る事は叶わず、魔王オモダルの見る映像を見せられている感じだ。
「久しぶりに肉体を得た。人間の肉体なぞ弱々しいものだが、悪くないーーー。試運転と行くかのッ、『身体強化』!」
体の内側から溢れ出ていた魔力が、黒い霧となり鎧の様に俺(魔王オモダル)を包み込む。
「フッ、フハハハッ」真っ黒な鎧を纏った俺(魔王オモダル)は天を見上げて哄笑した。
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