第60話 じ ゅ う り ん
さぁ、最後の仕上げだ。
さんざんやってくれたじゃねぇか？
俺はミスリルの剣を振り上げた。
シュ‥‥‥
目の前が歪んだ。崩れ落ちる。魔力切れ？ 霊力を維持するための魔力が切れた。
「ぶはぁ！ はぁッ、はぁッ」
い、息がきれるーーー。
考えてみればブラック・ドラゴンを倒すためにかなり消耗していた。
「コウヤ少し休んでいいぞ」
コウが立ち上がり、俺を
◇◇コウside◇◇
コウヤがガス欠で倒れ込んだ。
もともと軍神アトラス憑依は、魔力の消耗が大きいから長くは持たない。コウヤを
久しぶりだな。二人で戦うのは。
思わず口角が上がる。
体の奥からフツフツと、魔力が湧いてくるのがわかる。グルグルと体の細部まで循環させると、パチパチと音を立て始めた。
行くぞ！
「
シュタタターーーッ！ っと白い尾を引いて、光の矢がマオのシールドに突き刺さっては閃光を放ち消えてゆく。
「
「
魔王オモダルと戦ってわかった事があった。光の
削るには持って来いの技だ。だから魔王オモダル戦後習得した。
「く、くそっ！ こんな小技なぞ！」
マオがシールドを厚くしながら後退する。
私は周囲を見渡しながら、
まだまだ余力がありそうだ。
「ファイヤ・ボム！」
当たりをつけて放つ。
シュゴォ！ シュ‥シュゴォ！
マオの後方に真っ白な火の玉が出現した。たちまち辺りは熱波に包まれた。
「きゃあああ！」
マオから甲高い悲鳴がもれる。熱波から逃れようと走り出すものの足がもつれ、前のめりに倒れた。
「うぎゃあああーッ！」
別の声が反対側から上がる。
やはり伏兵がいた。
「あつ、熱い！ あーーーっ！」
見るとマオの服に引火している。悲鳴を上げながらゴロゴロと転げ回った。
◇◇ナナミside◇◇
凄い、スゴイ、すごい！
コウヤ様も凄いけど、この人も凄い！
なんなの？ ただのお役人じゃないの？
コウヤ様のお知り合いみたいだけど、ほとんど詠唱なしで超強力なファイヤ・ボムを連射している！
しかもほとんど初期動作なしで。手を少し
私に何か出来ることはないか？ 私だって何か出来るに決まってる！
◇◇コウヤside◇◇
全く呆れた奴だ。魔王オモダル戦より強くなっていやがる。
俺はふらつく体を引きずって物陰に隠れた。天中から糸で体を吊すように、真っ直ぐ姿勢をただし座禅を組む。
フー、フッ、スゥーッ、フッ、フッ、口で二回吐いて鼻から大きく吸い込む。それを三回に分けて息を吐き切る。
光陰流に伝わる呼吸法で体力、魔力の復活が早い。じんわりと指先が暖かくなってゆく。
霞んだ視界が戻ってくる。いつまでも、コウに頼っているわけにはいかない。
ヨシ、行くか？！
「コウ。もういいぞ」
俺は立ち上がり近づいていった。「って終わっているんじゃないのか？」
あまりの光景に驚く。
当たり一面、ブスブスと焦げて藁を燃やしたような匂いが漂っている。
俺は呆れた。
「拘束するだけじゃないのか？ 死んじゃったんじゃないの？」
見るとマオと奥に五人。卵のような黒い塊りになっている。
「心配するな。しっかりアイス・シールドを張っておいた。外からな」
コウがニヤリと笑った。
つまり中からは解除できないって事か？
「こいつらどうすんだ？」改めて気になる事を聞く。
「自白してもらうさ。通信石からの文書だけじゃ偽造を疑われる。何かと足を引っ張る輩がいるからな。厄介なところだよ。王宮は」
そっかーーー。俺にはとても務まりそうにないな。
「何にしても助かったよ。ありがとうな。今回ばかりはコウが居なかったらお手上げだった」
ぱぁん！
海亀に右手を合わせるて拝む。ありがとう。
さてと。
「リョウ。ナナミ！ 捕縛用のワイヤー持って来い。丁重に捕縛してやれ」
一連の
「「はい！」」
弾けるように走ってゆく。
ピシリッ！
嫌な音がした。
メリッ、メリメリッ！
見ると、マオを捕縛している黒こげのアイス・シールドがひび割れていく。
ーーーん？
「ゲェエェッ！ ゲェエェッ！」
この気味の悪い泣き声はーーー？！
やがて、黒い卵が割れるように裂けていった。中からは、しわくちゃのミイラ首が浮かび上がり糸に引かれるようにマオが立ち上がった。
全くーーー。
呪術ってのは厄介だな！？
次回 く び
俺は全身に鳥肌が立った！
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