第53話 に く の め


 「丁度良かった。お前たちも来い。事情を話す。」そう言ってキタエとゲルに向かった。


 「‥‥‥と言うわけだ。」

 俺は魔窟ダンジョンで見た石版を語り、監視されていた事。魔法陣が簡単に発生した事。

 そしてカイが捕われていた事。その手がかりになりそうな鍾乳洞の風景を話した。


「誰かその鍾乳洞を知らないか? 天井がけっこう高かったんで、かなり大きいと思うんだ」


「そんな事言ったってここらでそんな鍾乳洞があるって話聞いた事ないよ‥‥」

 ナナミが俯く。

 「ナナミ心配するなって! 俺が必ず見つけてやる!」

 リョウがナナミの肩に手を置いた。


 リョウのヤツ所構わずアピってきたな!


「[ゴシマカス魔道具開発]に問い合わせて見ましょう。地質分布図があった筈です。石灰岩質の地層の記録を洗って見ましょう」

 

 なんで? 鍾乳洞じゃなくて?


 「あいにく地元の人が知らないなら記録があるか怪しいかと‥‥‥。それなら鍾乳洞自体、石灰岩が地下水に削られてできたものですから、地質からあたりを付けた方が良い」


 おお!さすが!

 ゴシマカスの超優良企業主査!


 「あとコウヤさん、石版のこともう少し詳しく聞いて良いですか?形状の事とか、みぞの配置とか」


 パッと方眼紙を取り出す。さすが技術系主査?!メモも方眼紙?


「はっはっは。違いますよ。この方がより正確に再現できると思って持ってきただけです」


 サッ! カタッ。ツーッ、ツーッ、ツーッ、ッ。

 定規を置いて四角い図を書き出す。


 「四角い中にいくつか溝が彫られていた......で、いくつ縦横ミゾがあったか覚えていますか?」


 うーん? 曖昧なんだけどーーー。オセロみたいだったかな? んーと。


 「8×8だったような‥‥‥」

 後半は尻すぼみになる。数字は苦手だった。いつもかぁちゃんに叱られていたし。商売できないよって。俺のために店残しておきたかったのかな?

 ごめんな。かぁちゃん。


そんな俺のノスタルジーをほっといてサイカラは8×8の線を四角い箱に書き入れてゆく。


「真ん中がマオの部屋だったんですよね。左下の水晶に触れた時にカイさんの映像が現れたっと。《風の民》の集落はどこか覚えていますか?」


 確か‥‥‥。

 確か右上だったような‥‥‥?


 「結論から言ってこのミゾは座標軸だと思うんです。だから真ん中にマオの部屋があったと仮定すると‥‥‥」


 ツーッ、ツーッ、ツーッ、ッ。

 「左下に鍾乳洞、右上に《風の民》の集落。

 「ナナミさん。この集落から魔窟ダンジョンまでだいたいの距離を教えてください」


 「だいたいだけど‥‥‥。5キロくらいかな?」


 「‥‥‥。と、すれば南西10キロの辺りにカイさんのいる鍾乳洞があると仮定できます。この仮説と 地質分布図を照合すれば‥‥」


 キュ! キュ! 地図に大きく丸を書く。

 ピンコン ♪

 通信石が鳴りブッと紙を吐き出す。‥‥‥照合すれば限りなく正解に近いかと」

 ニヤリと笑ってサイカラは送られて来た地質分域とマス目を重ねる。日に透かして見せる。


 ドンビシャだ!

「ここがくさいかと思います」

銀淵ぎんぶちメガネをキラリと輝かせ、サイカラは断定した。


 俺はニヤリと笑って親指を立てた。

 G.J サイカラ!


「それとサンプルから、面白いものが採取できました」プレパラートから取り出す。

餃子のような形をした薄いピンク色の塊りだ。


「肉の芽です。宿主に寄生して傀儡くぐつ

する寄生獣です。これが呪術のタネかと‥‥‥。

この肉の芽を埋め込み傀儡化する。傀儡化された人間は人体改造も受け入れる。もう少し検証は必要ですけどね」

サイカラがペン先で突く。


◇◇


その夜俺は夢を見た。

カイがキタエとナナミを抱きしめている。そして何故か俺が慌てている。リョウが泣きそうな顔で立っていた。


 とても暖かな光景だ。

カイ‥‥‥。もう少し待ってろ。俺が必ず助けてやる。きっとだ。そしてこの光景がまた見れますように。今は女神アテーナイに祈ろう。

それまで生きていてくれ。待ってろ!


次回 た ん け ん

俺は ついに!

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