第34話 エピローグ

 真っ青な青空に鳩が羽ばたき、宮廷内にファンファーレが響き渡る。

 魔王オモダル討伐を祝う式典がスタートした。


 会場の扉を開けると、真っ赤な絨毯が王座まで続き、道の両脇には王侯貴族が並んでいる。

 その後ろには、騎士団が厳重に警戒しつつもどの顔もみな晴れやかだ。


 タタタターッ♩ タン♪ タタタターッ♩

 タン♪

 タタタッタッタ♩ タタタッタッタ♩

 タタタッーータン♪


 軽快なドラムの音と、コントラバスのような管楽器の重低音が拍子を取り出す。

 小鳥のさえずりのような笛が、主旋律の吹奏を始めた。

 おくれて管楽器が厚い音を乗せて来る。


 その音をバックに、晴れやかな顔で赤い絨毯を歩いて来るコウ。

 場違い感満載で落ち着かないコウヤ。


 ゆっくりとウスケ・シマカス国王と、サユキ・シマカス上皇の前に跪いた。


 二人の前まで上皇は進み出ると、肩に手を置き感謝の意を示した。


 「同志! この感謝をどう述べて良いものか? 我が国民が、どれほど感謝しているか?

 ーーー言葉にできない。

 ただ、君たちの流した血と汗で、幾何億もの同志の命が救われた」

 スッと上皇自ら跪き、コウヤとコウの手を取った。

 己の額までその手を押し頂き、広角をあげる。

 「ありがとう」

 ニッコリと微笑み二人の肩を抱いた。


 「ありがとう。君たちに救われた。 

  本当に......ありがとう」


 ウオーーッ と、地鳴りのような歓声が上がった。

 王の間の隣からも聞こえてくる。


 歓声に目をやると、上皇が二人を誘いベランダに出た。


 幾万と言う王国の民が、口々に歓声を上げながら手を振っている。


 「ありがとう!」

 「ありがとう」

 口々にそう叫んでいるようだ。


 コウヤとコウは、手を振って応えている。


 論功授与式では、国王のウスケ・シマカスと大臣のブロウサがなんかいっていたが耳に入らなかった。


 なんか感動的な演説だろうけど‥‥‥。

 上皇の言葉に比べれば薄っぺらで、「爵位を与える」とか、300億インずつ与えるとか。

その他にも勲章やら、家屋敷やらくれるらしい。


 くれるらしいから跪いてもらっておいた。

 お礼も言わなきゃな。


 命をかけて守るだの、忠誠を誓うだのリハーサル通り答えた。


 守りたかったのは、こんな王侯貴族たちでは無く毎日必死に生きてる人たちだったけど。


 論功授与の儀が終わると晩餐会がある。

 そのひとときの間に、2人は屋上に逃げ出していた。


 「ふぅー! すごかったな!? コウ。

 よかった。みんなあんなに喜んでくれて」


 「ああーーーそだな」

 コウの顔は浮かない。


 魔王は倒した。

 だが勝利の喜びはなかった。

 コウは呟く。

 「本当に勝ったのかなーーー?」


 魔王オモダルは言った。

 人は搾取し続けなければ生きられない。

 人はいずれ滅ぶまで、また搾取と理不尽は繰り返すのだろう。


 「ああーーー。人間の欲望が続く限り、また同じ事が繰り返すだろうな」


 コウヤはコウに向き直った。

 「だが、捨てたもんじゃないよ人間って」

コウと目が合う。


 「で、なんだ?」


 「愛が人をつなぎ、勇気が理不尽を止める。人はその両方とも持って生まれてくるんだ!」

 胸を張って答えた。


 コウは、晴れやかな笑顔を見せた。

 「お前が言うな」


 すこしはに噛んだ笑顔が眩しい!

 「‥‥‥と言うわけで僕らも愛し合おうじゃないか?!」


 「断る!」


 「そこをなんとか!!」


 「断固として断る!」

 空にふわりと浮かび飛び立って行く。


 「まって! おかしいな?

 まって!!

 ここは ご褒美のキスじゃ無いの?」


 「お前が捕まえられたらな!」


 「そこをなんとかぁぁぁぁぁぁっ!」

 コウヤは走り出す。

 昨日より少しはマシになって。


—おしまい——


ここまで読んでいただき

ありがとうございました。


第二章はちょっとサスペンス風に

なっております^ ^


謎解きと併せて引き継ぎお楽しみ頂ければ

幸いです。


どうぞご覧くださいませ^ ^




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