第29話 魔王登場
ゴシマカスの
巨大な亀の上にそびえる魔王城からは、幾千もの魔人が降下し始めていた。
王宮から見えるその巨大なすがたに、全員あんぐりと口を開けた。
「何故だ......? 何故魔眼にも検知されず、ここまで巨大な城が侵入できた?!」
防衛大臣 ムラク・ド・ジュンが掠れた声で呟いた。
◇◇ 魔王城にて◇◇
魔王城では魔王オモダルがニヤリと口角
を上げていた。
「魔法陣がおまえ達のものだけと思うたか? 愚か者が! 逆探知された時点で気づこうものを。
来るものを潰してゆく方が効率的であろうよ」
配下の兵を全てこのために温存していた。
ゆっくり左手を上げる。
「全軍 投下!」
————-//—————-//————/
一方王宮では混乱が極致に達していた。
「迎撃体勢を取れ! 間に合うものから順で良い! 第四防衛ラインは放棄! こちらに向かわせろ!」
防衛次官オキナが叫んでいる。
「王宮魔術士をかき集めろっ。シールド展開! 勇者コウヤと魔導師コウを緊急帰還っ。ヒール系の魔術師を引っ掻き集めろ! 勇者と魔導師の回復にあたらせるっ」
次々に防衛局員に指示を出し魔力を王宮に集中させる。
「金属兵段取りまだか? 発進体制取れ次第報告を!」
防衛大臣 ムラク・ド・ジュンに駆け寄る。
「防衛ライン構築まで時間が無さ過ぎます。一旦、国王陛下と上皇様の退避を!」
「その必要は無いーーー」
上皇ムラクは制した。
「退避は国王陛下だけで良い。ここに私が残り、我が兵と共に死兵と化し食い止めよう。それで死するなら皆と共に死そう。そのあとの事は国王ウスケ陛下に託す」
「ムラク上皇陛下ーーー。そ、それはなりません」
口を開けたのは意外にも国王ウスケだった。
「ムラク上皇様それはなりません。私ではこれほどの国難を乗り切るなぞ......。配下のせいとはいえ元を正せばーーー魔王オモダルを憤激させたのもーーー。こ、この私が、この国を荷うなぞ......」
ムラク上皇にヨロヨロと歩み寄ってゆく。
「すべてはこのムラクのせいにございますぞ。国王陛下ーーー。
はやこの状況。このムラクがこの責めを背負って参りましょう。あとは頼みました」
ムラク上皇は戦争責任を自らにする事で戦後処理をするつもりだ。
キッと国王ウスケを睨むと一喝した。
「陛下! 覚悟を決めよ!
勝つのです! 陛下は生き延びこの国を蘇らせるのです! その為に命を賭してそこに戦っておる者があそこに、前線に、目の前におろうが!
民の痛みを自らの痛みと覚えめしませ」
呆然とする国王ウスケを避難させる指示を出すと前を向いた。
「さあ同志諸君!目に物見せてやりましょうぞ!」
司令部の気をひとつにまとめて老兵が吠える。
「さぁさ! 参りましょう!」
防衛大臣 ムラク・ド・ジュンもニヤリと笑い続けて吠えた。
次回 魔王オモダル
物語はクライマックスへ
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