第69話 ど、どこ触ってるのよ!
町の外側にはいくつもの工房が並んでいた。もうすぐ冬になろうかというのに、この一帯だけ真夏のように暑い。あちらこちらから金属を叩くガンガンガンという音がリズム良く木霊している。三三七拍子はこの世界にも存在するらしい。
「凄い暑さですわ。これだけの熱が必要なら、薪が大量に必要なのも納得ですわ」
すぐ隣に良質な鉱山があるだけあって、工房の多くは金属性の武器や防具を作っているようだった。工房の前にはたくさんの剣や斧や槍などの刃物が並んでいる。
「見てよシリウス、あたしあれが欲しい!」
「いや、フェオには大きすぎて持てないだろ。それにフェオは魔法が使えるんだから、剣とかいらないだろう?」
「だって、格好いいじゃない」
確かにそうかも知れないが、フェオが格好良くなってもなぁ。どちらかと言えば可愛くなってもらいたい。
そのようなことをフェオに言うと、顔を赤くして、ばか! と言ってきた。可愛い。
工房では、どうやら無事にコークスを試しに使ってもらえるように約束を取り付けたみたいだ。早速コークスが運ばれて来ている。
ちなみにこのコークスを用いた錬成製法は、その高火力によって質の良い金属を生み出した。それを用いた武器や防具は、高品質の武具として好評を博することとなり、町の名産品となった。
町の中の視察も一通りの終わったので、俺達は今日からしばらくお世話になる、町長の家へとやって来ていた。
「このようなところで申し訳ありません。村から町の規模になってから日が浅く、民宿しかないのですよ。この町には観光スポットもなければ、冒険者ギルドもないですからね」
レスターさんは申し訳なさそうに言ったが、村ではこれが普通だと思う。前の村でもそうだったので、特に問題はないと言っておいた。それに、元騎士のレスターがいる家なら安心だ。
町長の家だけあってそれなりの広さがあり、俺達について来ている護衛や使用人達もまとめて泊まることができた。
それになんと、風呂まであるのだ。小さいけど。
町に来てそうそう黒い石問題を解決したからなのか、俺達が来たからなのか、その日の晩餐はかなり気合いの入ったものになっていた。
本当はあまり迷惑をかけたくないので、外で何か食べようかと思っていたのだが、みんなでありがたくいただいた。
食事のあとは、そう、お風呂の時間である。
「さすがに四人で入るには狭いんじゃないかなぁ?」
ぎゅうぎゅうになっている湯船の中で聞いてみた。別に全員で入る必要はないのだ。二人ずつ入れば、もっと広々と入れるはずだ。
「大丈夫ですわ。私は何も気にしてませんわ」
「あたしも~」
「気にしない」
「ソウデスカ」
仮にもお姫様、こんな狭いお風呂に入れるのはどうかと思ったのだが、本人は特に気にしてないようだ。
俺はと言うと、いつもよりかなり密着した状態なのでかなりヤバい。何がヤバいって、言うまでもなく、シリウス君の豆柴がヤバい。
丸い湯船なので目の前にクリスティアナ様とエクス、そして真ん中にフェオ、といった構図になっているのだ。チラチラと見えるピンク色が非常に目に毒である。三人とも肌が綺麗なんだよな~。
「シリウス様、明日はどうなさるおつもりですか?」
「明日は例の魔境の視察に行こうと思います」
「危険なのではありませんか?」
「聖剣持ちに、妖精に、影の王に、フェニックス。余程のことがない限り大丈夫かと思いますけど・・・」
「そうですわね・・・」
クリスティアナ様も納得してくれたようだ。
本気を出せば小さい国なら滅ぼすことができそうな布陣である。そうなれば、魔王ルート一直線だ。大魔王にもなれそう。ならないし、やらないけど。
「頑張ってたくさん倒す」
エクスが意気込んだ。魔物を倒す過程で魔法が使えるようになるかも知れないのだ。そうなるのも当然か。頑張ろうな、エクス。そして何とか魔法を使えるようになってくれ。みんなと一線を越える勇気は、まだ、ない。
前世では童貞というわけではなかったが、さすがに今の年齢ではまずいだろう。まだ、八才だもんね、俺達。
う~ん、それにしても改めて見ると、八才にしてはクリスティアナ様のおっぱいが大きすぎないか? この世界の人間は発育がいいのかな? まあ、成人するのが15才だし、そんなもんなのかも知れない。その年齢で結婚して、子供を産む人もたくさんいるのだ。
クリスティアナ様のおっぱいをガン見してたのがバレたのか、クリスティアナ様がそっと胸を両手で隠した。顔は真っ赤になっている。
ごめんなさい! そんなつもりじゃない、こともないのかも知れない。健全な男の子はみんな興味があるのよ。仕方ないね。
その頃フェオは気持ち良さそうに目を閉じて、水面にプカプカ浮かんでいた。背泳ぎ状態で浮かんでいたので、全部丸見えである。これはこれで目のやり場に困るな・・・。
挙動不審な俺にエクスがピッタリと引っ付いてきた。
エクスの胸はなだらかではあるが、完全なフラットではない。引っ付いた箇所からはしっかりとした確実な柔らかさを感じた。
「大丈夫だよ。きっと上手く言って、エクスも魔法が使えるようになるよ」
「うん」
エクスはそう言ったが、その目には不安の色が見て取れた。俺は別にエクスが魔法を使えなくても十分なのだが、本人にとってはとても重大な案件のようだ。
エクスの不安を解消するためにも、明日は頑張らなければならないな。
「フェオ、そろそろ風呂から出るよ」
目の前でスッポンポンで浮かんでいるフェオを突っついた。
「ひゃうん! ど、どこ触ってるのよ!」
フェオから可愛い声が漏れた。
俺、どこかまずいところを触りましたかね? お腹辺りだったと思うんだけど・・・。
ハッとして、クリスティアナ様とエクスがこちらを向いた。
「いや、変なところを触ってないからね!?」
「ではどこを触ったのですか? 私で再現して下さいませ」
「お姉ちゃんの次は私」
エクスはクリスティアナ様の妹にしてもらったのか。だからクリスティアナ様がおかんのようになっていたのか。良かったな、エクス。
ジッとこちらを見る二人。赤くなってクネクネするフェオ。
大変遺憾ではあるが、俺はそっと手を伸ばし二人のお腹辺りを撫でた。
二人からも可愛い声が漏れた。
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