第62話 これは……温泉!
みんなのお陰であっという間に畑の区画整理が終わった。ついでに邪魔になりそうな森の木も切り倒し、ずいぶんと開けた土地が眼下に広がった。これで当分は大丈夫だろう。
「ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいものか。まさか一日で終わるとは思っても見ませんでしたよ」
村長息子が村人を代表して言った。冷静に考えると、一日でやる必要はなかったような気がする。
「いえ、お役に立てて何よりですよ。それで次は井戸、の前に、先に熱いお湯の確認をしたいのですが、いいですか?」
「もちろんですよ。畑が使えるようになるまではまだ時間がかかりますから、井戸についてはしばらくは大丈夫でしょう」
ささ、こっちです、と村長息子は案内してくれた。
「先に例の温泉を作るの? そんなに温泉に入ってみたかったの?」
「入ってみたかったのもあるけど、自分達の姿を見て見なよ。汗と土と埃まみれだよ。温泉に入ってスッキリしたいと思わない?」
「思う、思う! 早く温泉に入ろうよ~」
いや、フェオさんや、その前に温泉施設を作らないといけないんだよ。まあ、材料の木は先ほどたくさんの用意したし、丸太小屋くらいなら木を重ねてすぐに作れるのではなかろうか。ログハウスとか作ったことないけどね。
脱ぎ出しそうな勢いのフェオを止め、村長息子について行くと、村の外れに湯気がモウモウと立ち上っているのが見えた。
「これは・・・温泉ですね」
溜め池には温泉が満たされていた。本来ならば井戸から湧き出た水を一旦溜め池に溜めておき、必要に応じて使うつもりだったのだろう。しかし、無惨にも温泉が湧き、そのまま放置されているようだ。
「う~ん、効用は腰痛、肩こり、美肌効果があるみたいね」
ほんとに温泉の効用が分かるんだ。ちょっと馬鹿にしてわ。ごめんねフェオちゃん。しかし、かなかないい効用である。
「整備すれば十分に使えそうだね。早速始めよう」
まずは湯船を作り、次に溜め池から水路で温泉を送り込む。湯船は木で作ろうかと思ったが、水漏れが怖かったので土を固めて作ることにした。
『ガイアコントロール』の魔法で穴を掘り、壁になる部分をしっかりと固めておいた。これでよし。
同じように水路も作り、湯船に流した。どうやら思ったよりもいい感じに出来上がった。
「もうできたの? 早くない?」
「作りは適当だけどね。温泉に入るだけなら申し分ないでしょ。あとは囲いだな。露天風呂にしたいし、天井部分はなしにしておこうかな?」
先ほど切り出した木を適当な数もらって、丸太小屋を作っていった。魔法のお陰で簡単にログハウスができていく。『ムーブ』の魔法と風魔法は偉大だ。
自分達で切り出したことをいいことに、結構な数の木材を消費していく。丸太小屋ってこんなに木を使うのか。やはり加工して使った方が無駄な消費がなくて良さそうだな。次から気をつけます。
そんなこんなで湯船を囲むログハウスが完成した。天井はないが、上から覗かれないようにログハウスの外側の材質はツルツルに滑るように細工しておいた。空を飛ばれたらおしまいだが、今のところ、鳥類とフェオ以外に空を飛んでいるのを見たことがないので、大丈夫だろう。
「ようやくできたぞ。早く温泉に浸かりたい」
すでに日は傾き始めていた。もちろんみんなにも手伝ってもらったが、丸太の加工に結構な時間を取られた。もし、また作ることがあれば、そのときは土魔法で壁を作ってサクッと終わらせようと思う。
建物を作るのには土魔法が最適だ。使えて良かった土魔法。
露天風呂の構造はまだ作っている途中という体で、ログハウスの中で服を脱ぐ構造になっている。ゆくゆくは外に脱衣場を村の人達で作ってもらいたい。あまりでしゃばると、俺達専用の風呂、みたいになるので、村のみんなに使ってもらうためにも、村のみんなを巻き込んで作りあげたい。
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