第127話 アルカ様。
北部10カ国で構成されるノースサイド歓待会。
各国持ち回りでホスト国を務め開催される大魔王トーナメントの前哨戦は、その結果で本戦の組み合わせがきまるらしい。
ベスト4に残った国はシード。
残りの国はそれなりに本戦では分散され、勝ち進まないと一度戦った相手とは当たらない様工夫されているのだとか。
どこの国も精一杯戦いを楽しめるように配慮されているのだった。
正々堂々悔いの残らない闘いを。
これがこの大会におけるキャッチフレーズだったのだ。
まあそれなら今回の戦いは安心して勝てるよね。
どこと当たったとしても、どこを倒しちゃったとしても、そんなに気に止むこともない。
それだけは救いかな。
そんなことを考えながらあたしはベッドからおきると身支度をして廊下に出る。
この時間はわりと自由時間。
朝ごはんまですこし時間があるみたいだからどうしよっかなって思いながらお庭に出てみた。
日差しは初夏な感じの気持ちのいい朝。風もちょうどいい感じに吹いてて心地いい。
庭の中央にはお池があって、そこには真っ白なテーブルに椅子。猫足のかわいいガーデンチェアに腰かけると、なんだか眠くなってきた。
うーん。ねちゃ、まずいよねえ。
とかうとうとしはじめていると、誰かが下草を踏み締めてこちらに近づいてくる気配がする。
どこのだれかなぁとかぼんやり思いながら椅子の背越しにそちらを覗くと。
真っ赤な髪に黒いツノ。すらっとした綺麗な物腰のアルカ様がこっちに歩いてきた。まだあたしのことには気がついてない?
どうしようかな?
挨拶、すればいいかな?
そんなにキツそうな人じゃなさそうだし、ちょっと挨拶だけしてみよう。
それに、この人の魔力紋、ちょっときになるんだよね。
「おはようございます。あるかさま?」
「ひゃう。あうあう、おはようございます。えっと、ミーシャさま?」
あたしは椅子の背ごしに顔をだして挨拶して。
ちょっとびっくりさせちゃったかな。アルカさま、ちょっときょどっちゃった。
「ごめんなさいびっくりさせて。アルカさまでよろしいのですよね? 今朝はお一人でお散歩ですか?」
「あ、はい……。そうです。ごめんなさい……」
あう。
うー、ちょっとね。ほんとにこの方アルカ様なんだろうか?
初日の清楚なお嬢様風なだけを見たらそこまで感じなかったけど、ちょっとこの子、おどおどしすぎ?
あたしはひょこん、と椅子から飛び降りて。
「アルカさまも試合にお出になるのですよね?」
ときいてみる。
ちょっといじわるかなぁとか思ったけど、この子、これでほんと戦えるのかな? 大丈夫なのかな? そんな風にも思えてきて。
「うう。いちおう……、出なきゃいけないことになってるんです……」
と、肩を落としたアルカ。
ああ。やっぱり何か訳ありなのかな? そんな感じ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます