第102話 ミーシャとラギレス。

 そういえば。


 勇者さまがこの王都に帰ってきた。


 レイチェル先生と一緒にわたしたちの先生をするんだって。びっくりだね?


 先生の旦那様、ロウさんも講師になった。


 なんでも、レイチェル先生と勇者さまを二人きりにさせたくないんだって。


 まあでもあの二人にはそういう関係っぽいところは感じられなかったけどな。



 少しだけ残っているラギレスの記憶によると……。


 勇者さまのこと好きだったって。そんな気持ちが溢れてた。


 今のミーシャはよくわかんないけど、それでもやっぱり好きなのかな……?


 勇者さまはなんだか少し変わった。


 ちょっと影ができたような気もする。


 前にわたしにマギアキャッツアイをくれた時とちょっと似ているけど、また違う。


 目がちょっとキツイ。


 あれは何かの覚悟を決めた目。


 そんな気もするけど。


 まあ、しょうがないのかもしれない。




 あの夜。


 ミーシャが身体を貸してといったあの日。


 わたしはミーシャの中で寝てたけど、途中からなんだか変な夢を見た。


 うっすらと目を開けるとそこには裸のわたし?


 未来のわたし?


 そんな身体が浮かんでた。


 でも。


 大人のわたしって、それってラギレス?


 そんな風にも思えて。



 すーっと身体が軽くなったと思ったら、心の中に少し隙間ができて。


 中で寝てたはずのわたしが表に出てきてて。


 目の前の身体がふっと目を開けたのだ。



 こちらを見るその目の、左目は金緑で。


 不思議だった。


 なんだか自分で自分を外から見てるような。


 そんな気分にもなって。


 ああ、この女性がほんとうのラギレスなんだな。


 そう確信した。




 そこまでしか覚えてないけどそんな夢。


 そう。あれは夢。の、はず。なんだけどな。


 実はそれ以来、マギア・キャッツアイは何処かに行ってしまった。


 だから。


 ラギレスは、何処かに行ってしまった。


 ……。


 なんだか思い出すと涙が出そうになるけど。


 





 わたしは残ったミーシャに泣きそうになった涙をこすりつけて。我慢した。


 泣いちゃいけないんだって。何故かそう感じて居たから。



 ミーシャが、ミーシャだけでも残ってくれたのだもん。


 わたしの為に。



 残ってくれたミーシャ、と、行ってしまったラギレス。


 そういうことなのだな、って。そう思ったのだ。

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