第92話 出来上がったあたし。

 出来上がったのは十八歳のあたし。


 うん。


 胸はアリシアのたわわよりは少し小さいけど、それでもまだ充分いい感じ。


 お肉のつき具合も悪くはないよね?


 レイアより年齢行ってる分、ちゃんと女性らしい体つきになってる。


 あたしは自分のインナースペースを少しレイアに残して、新しい身体に引っ越した。


 薄っすらと目を開ける。


 うん。ちゃんと見える。


 目の前のレイアの身体がすっと横たわるのを両手で支えて、ソファーに寝かしたところでノワールの方に向き直る。


 驚愕の目で見ているノワ。


 でも、その目には優しくて愛おしさが溢れてる。


「ノワ。あたし……」


 あなたにちゃんと触れて欲しかったの。


 そこまでは言葉にしなかったけど。


「ハルカねえさん。おかえり」


 ノワのその言葉は、本当の意味でのおかえり、だと、そう感じた。


 あたしは嬉しくて。


 そのままノワに抱きついた。


 胸がむにゅって潰れたけどそんなのお構いなしでぎゅうって抱きついて。ノワも、ちょっと躊躇いながらあたしを抱きしめてくれた。


「ノワ、ノワ……」


 あたしは泣きそうになって今にも溢れて来そうになってる涙を堪えて。


 ノワの胸に顔を埋めた。


 広くて頼りがいのある、そんな身体。


 ほんとにこの子は大人なんだなともう何度もそんなことを考えてしまうけど、それが本当に嬉しくて。


 あたしはしばらくそのまま抱きついて、安心した。心地いい温もりが愛しかった。





 ☆☆☆




 レイアをちゃんとしたベッドに寝かせ、あたしとノワはお茶を飲みながらくつろいで。


 あ、そうそう。ちゃんと服は着たよ?


 ノワがうるさいしね。


「さすがにさ、裸はまずいから服着てね」


 なんて言われたらいい雰囲気も台無しだ。




 ほんとはちょっとあの日の夜みたいなことも期待したけど、レイアが寝てるとはいえ近くにいるにのにね?


 そんなに過激なこともできないし。


 まあ、直接は抱きついたし抱きしめては貰ったからそれでちょっと満足しておく。


 裸で抱きついちゃったからちょっとふにゃぁだったかもだけど。




 ゆっくりお茶をしながら。


 あたしは少しづつ口を開いた。


 あの明け方別れてからあたしに起きた事を。


 なるべく包み隠さず。



 どうしてもノワにだけは、聞いて欲しかったから。

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