第60話 レイチェルの部屋で。

 レイチェルの部屋はちょっとシックな感じ。


 アンティークなソファーに座るとふかふかで、なんだか寝ちゃいそうになる。


 あれ?


 猫の身体じゃなくなったはずなのに、やっぱり魔力使いすぎるとふにゃぁ?


「大丈夫? ラギレス。随分眠そうよ?」


「うん、ごめん、ちょっとふにゃぁで」


 ここがふかふかじゃなかったらもっとしっかりできたかも? なんだけどダメ。


 あたしはばたんとソファーに横になると、そのまま丸くなって寝ちゃったっぽい。



 いつのまにか意識が底まで落ちていくような感じで。





 ——ミーシャ、ミーシャ、そろそろおきないかなー?


 あ、レイア。ごめん。あたし寝てた?


 ——うん。もうけっこう時間経ったんじゃないかなぁ? 夕方近いかも?


 あうあう。


 ごめんねレイア。午後の授業出られなかった……。


 ——それはいいよ。午後は座学だったしそれにわたしが調子に乗りすぎたのが悪いよね。


 あう。


 まあ、強すぎる魔力は扱いも大変だしね。昔、自分で自分の手吹き飛ばしちゃった人もいたから。


 ——えー? それって大変じゃん。


 まあ、あたしが治してあげたけどね? ノワの事だけど。


 ——あは。勇者さまでもそんな失敗するんだ。


 昔のはなしよ。



 あ、昔で思い出した。



 ここ、レイチェルの部屋、だったよね?


 ——そーだよー。たぶん、ずっと、こちらを見てる。ちゃんと説明してあげてね? あとでわたしが困らないように。


 りょうかい。まあてきとうにね。




 と、ちょっと薄目をあけてみるとそこにはこちらを覗き込むように見てるレイチェルの顔。


 あたしの寝息が変わったから? もうおきてる? って感じで覗き込んでる?


「ごめんレイチェル。あたし、どんだけ寝てた?」


「ああ、おきたのね。もう大丈夫なの?」


「うん。たぶん、大丈夫」


「もう午後の授業が終わるくらいの時間かな。ねえ、帰る前に少しお話ししてくれるよね?」


「うん。そうだね。長くなるけど……」


「ワタシ、ずっと待ってたんだから。あなたが帰ってくるの。あれからずっと……」


 レイチェルはまだちょっと涙ぐんで。


「ねえ。七年前のノワの魔界行き、あの時にラギレスついて行ったんじゃないの?」


「え? どうして……」


「あの後のノワの落ち込みようが酷くてさ。ねえ、ラギレス。一緒にノワの所に行ってくれない?」


 そっか。


 ノワはまだあたしが死んだと思ってるよね。


 ——そうだよね。ミーシャ。わたしなら大丈夫だよ? 一緒に勇者さまのところいってみよ?


 ありがとうレイア。ごめんね。

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