第37話 輪廻転生。
前前世の日本には輪廻転生って言葉があった。
りんねてんしょう、って読むその言葉。あたしの転生とはまたちょっと違って。
人の心は集合的無意識によって繋がっている、と、そういう考え方もあった。
たぶんこの集合的無意識、輪廻の円環。そんなものが世界のコトワリには存在していて。
メーティスの書庫は、いろんなコトヲ教えてくれる。
此処にある魔、元の世界にある聖。
これは表裏一体で。
人の心が浄化され行き着く先、なのだという。
それらは個にして全、全にして個。
そのコトワリの中で人々の心は円環を巡るのだ。
あたしみたいのは例外、ってことなのかな?
普通浄化された心はまっさらになって転生するから、こんなふうに前世をしっかり覚えてなど居ないし前世の意識のまま生きる人も少ない。
仮に前世の記憶がある人であっても、それがこう何回も続くことなんてほぼ無いといっていいのかも。
前前世の記憶を持って生まれてきた存在なんて、あたし以外にはまだ見たことないし。
実はメーティスの書庫の何処を読んでもそんな存在の記録は無かった、のだった。
「よいしょっと」
テントをしまいノワの方に振り返る。
「ねえ。結局どこまで確認するの?」
それをはっきり聞いてなかった。
とりあえず魔界に来るっていうからついてきたけど、ノワ、どうするつもりなのかな?
結局此処に魔王が居なくたって、魔王を滅ぼした証拠にはならないしね?
「魔王城の最奥まで見て行きますかね」
「それで終わりでいいんだよね? それ以上危険なことしないよね?」
「ええ。結局僕は確認したかっただけですから。あなたにあのとき跳ばされてからの事を」
前世での戦いは。
激しかった。
魔王とその従属する魔神、従属する竜。魔竜、黒竜ブラドの破壊力にノワの体力魔力共に限界となって。
なんとかブラドを退けた時にはロイやレイチャルにも限界が見えた。
あたしは魔王との最終決戦を待たずにその三人を元世界の空間に強制的に転移させた。
最後に見たその三人の目が驚愕に見開いていたのはまぶたの奥に焼き付いている。
あんな思いはもう嫌。
もう、誰にも傷ついてもらいたくないし。
離れ離れにもなりたくない。
だからこうやって無理やりついてきたのだ。
ノワが心配で。
「ごめん。ねえさん。僕のわがままに付き合わさせちゃって。でも、あの日から時間が止まっちゃったんだよ。それを動かしたいんだ」
そういうノワの顔は、昔と違って幼いところは微塵もなくて。
「うん。ごめんね……」
あたしはそう呟いて抱きつくしか出来なかった。
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