第27話 しあわせねこのカタチ。

「我慢、しなくたっていいのに」


 あたし、ちょっとそう拗ねてみた。


「それとも、もう恋人か奥さん、できちゃった?」


 もうあれから十年だ。きっといろいろかわっちゃったかもだし。


「いえ、僕は……。ずっと貴女だけを愛してますよ」


 そんな甘い台詞を耳許で囁く彼。


 もう。ほんとにいい男になっちゃったなぁ。


 お布団の中で、裸の胸を彼に押し当てる。


 なんだかあそこがずくんと疼いて。


 あう。あたし、もしかして。


 発情期、きちゃった?


 もう、我慢ができないよ。




 最初にあの子に会ったのは。


 あの子が十歳あたしが十四歳。


 まだすごくあどけなくて。かわいくて。


 あたしはその子、彼に、ひと目で恋に落ちたけど。


 でも、そんな事、誰にも言えなかった。


 あたしは彼の先生だったから、素直に慕ってくれる彼にそんなことを言うのは卑怯な気もして。


 年上の引目もあって。


 彼があたしのことを好きだといってくれた時も、茶化してごまかした。


「あたしのことは姉さんって思ってくれていいのよ」って。そう。




 でも。


 今、こうして再開できて。


 もう彼は二十四歳になるのかな?


 りっぱな大人で。


 もう、すっかりイケメンになった。


 あたし好みの声で囁くその優しい台詞に、あたしは……。



「ごめん。あたし。


 あたしの方がガマンできないよノワ」



「ああ。ハルカ姉さん……。


 ほんとにいいの?」



 そう、囁くように呟く彼。



 あたしは答える代わりに唇で彼の口を塞いで。


 抱きついた。





 お布団の中で。


 優しくあたしを撫で回してくれる大きな手。


 肌が敏感になってる。


 なんだかすごく気持ちが良くて。


 身体中が火照って、疼いて。


 もうどうしようもなくなった。


「お願い……」


 彼の力強い腕に抱かれ、あたしは……。



 あったかいな。


 ゆっくりと。


 彼があたしのなかに来てくれた。


 彼と一つになった時は、ほんとしあわせで。


 あたしは、至福に満たされたのだった。

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