第125話
「メリークリスマス! ア~ンド、ハッピバースデーッ!!」
千郷の祝うような声――いや、七面鳥の丸焼きが楽しみ過ぎて浮かれている陽気な声が家の中に響き渡った。千郷は浮かれ気分のままサンタコスチュームを身に纏い、白髭まで蓄える本気ぶりを見せていた。
リビングのダイニングテーブルにはいつも通り冬喜の姿もあり、楽しそうに三人で食卓を囲んでいた。
今日、テンジは17歳を迎えた。
そんなテンジに二人はプレゼントをくれた。
千郷は結局何をあげるのか決まらずに『なんでもしてあげる券』という平凡なプレゼントを渡した。冬喜はちゃんと考えてくれていたのか、武器を手入れするための高級な小道具を一式プレゼントしてくれた。もともと格安で買って持っていたやつよりも、数段は質のいいセットであった。
そうして全員が浮かれた気分になりながら、パーティーを楽しんでいる。
テーブルには七面鳥だけではなく、冬喜が手作りケーキを作って持ってきてくれたのだ。少し不格好ではあるが、高校生の男の子が頑張って作ってくれたというだけで、少し愛おしく感じる出来である。もちろん他の料理はすべてテンジの手作りだ。
クリスマス兼誕生日パーティーが始まると、それぞれが思い思いに話していく。
何と言うべきか、やはりここでは探索師やモンスターの話ばかりが話題に上がってしまう。これも探索師の性なのだろうか。
そんなテンジだが、今日この日に。
ようやく判明した天職の検証結果があった。
ステータスのパラメータ横に記載されていたカッコ書きの「16」という数字。
この数字が今日「17」に切り替わったのだ。
ちょうどテンジが生まれた早朝の1時05分頃、テンジは以前に立てた推測を確認するため、日付が変わった頃から閻魔の書とにらめっこをしていた。
そうしてその時刻が過ぎると同時に、16の数字が17へと変化したのをその目でしっかりと確認した。
その結果、やはりあの数字は年齢とリンクしていることが明確に判明した。
(でも、100歳になったらあの数字が100になるわけでもないよなぁ。一体、何歳まであの数字は上がり続けるんだろう)
年齢とともに延々と数値が上がるのならば、100歳の年寄りの方が成人男性よりも怪力馬鹿になってしまう。
そんな世界線があっても面白いとは思うが、生憎この世界では年齢を重ねていくにつれ身体能力が低下してく。どう足掻いても体が衰えていくのだ。
そう考えると、この年齢によるステータス上昇値もそう長くは続かないのではないだろうか、とテンジは推測していた。
「次は年明けだね! お正月はたっくさんおせち料理食べないとね! あっ、マジョルカの伝統料理とかもあるのかな!? 食べ尽くさないと!」
千郷の楽しそうな言葉に、弟子の二人は苦笑いを浮かべる。
彼女の手には丸々一匹の七面鳥が握られており、もの凄い勢いでバクバクと齧り付いていたのだ。もう少し落ち着いて食べなよ、そう言いたげな表情を冬喜は浮かべていた。
もちろんテンジの食欲が衰えることもなく、気が付けばあっという間にテーブルの料理がすっからかんになっていたのであった。
最後に彼らは無難なクリスマスプレゼントを交換し合い、束の間の楽しみであったパーティーが終わったのであった。
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