ダンジョンの奥地にて剣を500年振り続けたスケルトン、人と しての生を受け最強に至る

トラジロウ

第0章~魔物から人間~編

プロローグ 1

 ダンジョンを彷徨い続けて訪れた冒険者に襲い掛かる。

 それがスケルトンであり、俺である。

 なぜそうしているか?理由は特にない。

 言うならばそう造られたからとしか言えない。

 今回もいつものように棲家に入ってきた人間を殺そうとしたのが始まりだった。



 俺はいつものようにダンジョンを徘徊し、踏み荒らしにきた人間を発見した。

 相手は屈強な人間じゃなくて小さいよぼよぼの人間。

 普段ならば音を出して近くにいる魔物を呼び寄せるのだが、この相手ならば一人でも勝てるはずと見て一人で襲うことに決めた。


 だが油断はせずに、裏を取る。

 こうすればどんなに屈強な相手にでも一撃は与えられることを知っているからだ。


 裏へと回りこんで背後を取り、不意をついて攻撃を仕掛ける。

 完全にとらえたと思った拳はなぜか当たらずに空を切った。


「おっなんだい?スケルトンの癖にいい動きをするじゃないか!」

「うう、う!」

「意思も取ろうとしてるのかい!こりゃワタシのいい遊び相手になりそうだ!」


 おちょくるように手をヒラヒラさせて攻撃を誘発している、よぼよぼの人間。

 それにムキになり、それから何度もひたすらに攻撃を繰り返すが一度も当たらない。

 おかしい。

 どんなに屈強な相手でもこれだけ攻撃を繰り返せば掠るぐらいは当たるのに。


「どうした?アンデッドの癖にもう疲れたのかい?」

「ぐっぐうぐー!」

「はっはっはっ!そうかい!まだ疲れていないかい!」


 なにを言っているかは分からないが馬鹿にされていることだけは分かった。

 無我夢中で殺しにかかる。

 それでも俺の攻撃は一撃たりとも掠ることすらしない。

 絶対に殺してやる。

 その一心で襲い掛かり拳を振り続ける。



 それからどれくらいの時を襲い続けただろう。

 ひたすらにパンチをする俺とそれを躱し続けるよぼよぼの人間。

 俺がまた殴り掛かろうとしたとき人間が腰から一振りの剣を抜き、放り投げてきた。


 剣は銀色に光り輝いていて、持つ部分には綺麗な装飾が施されている。

 刀身は白い靄のようなオーラのようなものまで見える。


「それを使いな。そうしないとワタシには勝てないよ。」

「…?………カツ。」


 人間の取った行動はよく分からなかったが、投げられた剣が力のある武器であることは俺にも分かった。

 チャンスと見た俺は、下に落ちた剣を拾いあげて、再び人間に襲い掛かる。

 剣の扱い方も良く分からないが、この刃を当てさえすれば殺せると本能が確信している。

 如何にこの刃を人間に当てるかを考える。

 だがありとあらゆる方法で斬りかかっても素手のときと変わらず、当てることすらできない。

 すると痺れを切らしたのか人間が話しかけてきた。


「ちょっと止まりな。握り方からなっちゃいない。だから力が分散されちまうんだ。…違う!全部の指で力強く握るな!小指と薬指で絞めて他の指はふわっとだ!」

「チカラ。フワッ?」


 素手で殴りかかっているときも常に俺に話しかけていたためか人間の言葉も少しだが分かるようになっていた。

 敵である人間が己を殺す武器を与え、殺し方をレクチャーしている。

 おかしな状況ではあったが、それでもこの人間を殺せるならばと俺は素直に従った。


「そうだ。いい構えじゃないか!反対の手は間隔をあけて柄頭に沿って掴む。そうだ、振ってみな。」


 ブンッ

 ブンッ

 ブンッ


 何度か素振りをしてみると分かる。

 しっかりと剣を扱えている感覚が。

 その瞬間、ぶわーっとした歓喜が全身に駆け巡り、俺の心を躍らせる。

 これならばいける。

 そう確信した俺は早速、覚えた握りを駆使して人間に斬りかかるが…それでもまだ掠ることすらできない。


 なぜだおかしい。

 俺の力は確実にこの剣に伝わり、斬り裂きにいっているのにまるで空気を斬っているかの如く、躱される。


「ふっふ。やっぱり見込んだ通り面白い逸材だ。お前はワタシを殺せる武器も殺せる武器の扱い方もを手に入れた。だがそれではまだワタシは殺せない。なあ、お前…ワタシを殺す方法が知りたいか?」

「…シリタイ!」


 答えは即答だった。

 あの力が完璧に剣に伝わった感触が忘れられないのだ。

 あの感覚をまた味わえるのならば少しの間、この人間に従うのもアリと俺は考えた。


「そうか!知りたいか!ならば、まずはそうだね。ワタシのことは師匠と呼ぶようにしな。そうしないと教えてやらない。」

「シ、シ、シショー?、シショー」

「はっはっは。いい心がけだ。それじゃまずは基本の型から習得しないとね。」


 そこから本格的な剣術指導が入った。

 上から下へ振り下ろす唐竹。

 斜め上から斜め下に斬り裂く袈裟切り。

 横一閃に斬り裂く水平切り。

 斜め下から斜め上に斬り裂く切上。

 下から上へと斬り上げるの逆風。


 これをひたすらに繰り返す。

 ただひたすらに強くなることを夢見て繰り返す。


 だがあの全てがかみ合った感覚が一向に訪れない。

 流石にシショーに騙されているのかと思い始めたある時、急にあの感覚が訪れた。


 不意に袈裟斬りを行ったときだ。


 剣に風が纏い、空を剣が斬り裂く。


 俺の振った剣に力全てが伝わり、何度も素振りを行うことにより体に染みつき、より良い斬りが自然とでた。


 その時、剣の握りを覚え、剣を振るった時のあの感覚が全身を駆け巡った。


 これだ!俺が求めていた感覚は!


 先ほどの感覚を忘れないように何度も何度も体に覚えさせるように剣を振っていく。

 これが技術、これが剣術か。


「おお、中々良い太刀筋じゃないか。久しぶりにワタシを殺しにかかってみるか?」

「コロス!」


 久しぶりのシショーとの闘い。

 どうにか袈裟斬りをいい場面で放ちたい。

 その場面にいくようにどうにか工夫を凝らすが、なぜかどうしても狙っているところまでいかない。

 いつまで経っても良い場面を作れずにもどかしくなり、こちらが先に痺れを切らし無理やり袈裟斬りを放つ。

 かなり無理な体勢からの袈裟斬りだったが、手ごたえは完璧だ。


 練習通りに力が完全に伝わり、風を裂きそしてシショーの首筋、目掛けて剣を振り下ろす。


 これは殺せた。

 シショーの首に刃が入り、跳ね飛ばす。


 …未来が見えたはずなのだが剣を振り下ろし終え、前を見るがシショーの頭と胴体はくっついたまま。


「いい一撃だったがそれを狙いすぎだな。バレバレだ。」

「クヤシイ。」


 悔しい。

 悔しいがそれでも自分の力がついてきていることに喜びを感じる。

 それから何度か、戦闘を繰り返すがどうしてもいい体勢で袈裟斬りを行うことができなかった。


 シショーの言っていた、狙いがバレバレ。

 その言葉の意味がようやく分かった。

 唯一、完璧にできる袈裟斬りを狙いすぎて、シショーが袈裟斬りを上手くやらせない立ち回りをしていたのだと思う。

 ならばこれ以上続けても剣を当てることすらできないと俺は悟った。


「セントウオワリ。マタ、ケンヲフル!」

「もう自分で気が付いたかい。お前さんジークよりも余程才能あるよ。」

「ジーク?シラナイ。」


 またひたすらに剣を振り続ける。

 袈裟斬り以外の斬り方も完璧に振れるようになるために。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る