第119話 行方
ナナトたちと別れたディーノは地面を俯きながら歩き、数分歩いては立ち止まった。
さっきからこの調子で遅々として前へ進まない。
自分の足を止めるのは良心の呵責。銃の扱いに慣れたギルダーとはいえ、まだ子供といえる二人を危険な場所に残して自分だけがのうのうと宿屋へ帰るのは心が裂ける思いだった。他の奴隷たちも今頃はどうしているのか気になるところだ。結局自分はただ逃げているだけじゃないか。戦いに参加することはできなくても何か役立てることは他になかったのか…。
答えの出ない問いを幾度も思い起こし、ディーノは石畳の割れ目を見ながら歩いていく。だが突如、すぐの前から男の声がした。
「こんなところにいたのですか」
ディーノが顔を上げ、目の前に立つ男を見て表情をひきつらせた。すぐに逃げようと考えたが、すでに背後には部下が回り込んでいる。物思いに耽るあまり、周囲を囲まれていることに気が付けなかった。
「また会えて嬉しいですよ。場所を移して話をしましょうか」
盾使いのモネアが、薄笑いを浮かべてディーノに語りかけた。
急がなくちゃ。
ナナトはリボルバー・ライフルを何度も背負い直しながら大急ぎで旧市街を駆け抜けた。もう少しすれば繁華街に出る。宿屋へはあと十五分ほどだ。
ツアムさんも無事だといいんだけど。
ナナトが曲がり角を折れたとき、数十メートル先で見覚えのある顔を見つけて立ち止まった。ディーノだ。そしてディーノを取り囲むようにして男たち四人が周りにつき、その先頭には眼鏡をかけた男が歩いている。遠い距離だが、ナナトのよい目は確実に捉え、懸賞首の似顔絵の人物だと判別した。
盾使いのモネア。
ディーノの表情からすでに逃走を諦め、ひどく怯えている様子が伺える。モネアと部下四人はディーノを連れて路地へ入っていった。
どうしよう。ディーノを助けたいが、スキーネのことだって気掛かりだ。モネアたちが進んだ先は宿屋とは別方向になる。
早くツアムさんたちに状況を知らせないと。
ナナトは瞼を強く閉じて数秒間悩み、決断を下して目を見開くと勢いよく歩き出した。モネアたちの後を追う。宿屋に行くのは後回しだ。ナナトの頭の中に、部屋でディーノが語った言葉が呼び起された。
あいつらにまた捕まったらどんなひどいことをされるか…。
ナナトにはディーノを見捨てられなかった。急いで助けるべく石畳の道を駆けていく。
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